日本裁判官ネットワークブログ
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 「10回裏切られたら,11回信じよう」
 今は退職された元中学教師の生徒指導時代のモットーであったという。 ある勉強会で,この先生のお話を聞くことができた。
 昭和50年代後半,中学校が最高に荒れまくっていた時代に,生徒指導を担当し,非行に走る子ども達と,昼となく夜となく「格闘」してきた。退職した今も,非行問題と取り組むボランティア活動をしておられる。その先生の言葉である。
 「子どもは過ちを繰り返しながら立ち直っていく」とも,先生は言う。その変化と成長を信じ切る気持ちが先生の仕事を支えていた。そうした信頼に,子ども達はいつの日か答えてくれる。最高にやんちゃであった学年の「ワル」たちも,それぞれに一人前の社会人となり,何人かからは,結婚式にも招かれている。退職したときには,その「ワル」らが呼びかけて,盛大にお祝いの会を開いてくれた。
 いつの時代にも,熱血先生がおられるものだ。その情熱を支えるのが,生徒らに対する愛情と信頼なのであろう。

 少年審判を流れる基調も,少年たちの健全育成であり,教育的役割は大きい。しかし,残念ながら「11回信じる」ことはできない,それどころか,1回目の非行は大目にみたとしても,2回目の同じような誤りに対しては,厳しい対処で臨まざるを得ない。場合によっては,少年院に収容して教育を受けさせることだってある。
 学校教育と司法の場との違いに考え込まざるを得ない。しかし,司法においても,少年たちの成長を信じる気持ちを失っては,教育的機能を果たすことはできまい。自戒を込めて,あらためて思う。(蕪勢)

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