先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

「完全にアウト」「類人猿は先住民?」と疑問殺到で大炎上したMrs.GREEN APPLEの新MV「コロンブス」。謝罪は迅速かつ的確なのに、なぜ公開に至った?

2024-06-15 | 先住民族関連

東洋経済6/14 13:51

人気バンドのMVが大炎上。しかし、炎上後の対応は迅速かつ的確…「ならなぜ動画を公開した?」「危ないかもと思ってて、言い出せなかった関係者もいたのでは?」と思えてくる事案です(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)

 3人組ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)」の新曲、「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)が大炎上している。「コロンブスが類人猿に物事を教え、馬車を引かせる」といった描写が問題視されたことで、MVは非公開に。メンバーが謝罪し、同曲を起用したコカ・コーラの広告展開も中止となった。
 ネットメディア編集者として、これまであらゆる炎上ケースを見てきたが、炎上後の対応に限ってみると、迅速かつ的確な印象を覚える。だからこそ、「なぜOKと判断されたのか」が、極めて疑問に感じる。なぜここまで炎上したのか、経緯を振り返りながら考えてみよう。

■新曲「コロンブス」が大炎上
 Mrs. GREEN APPLEは2013年結成、2015年メジャーデビューのバンドで、活動休止を経た2022年からは、ボーカル&ギターの大森元貴さん、ギターの若井滉斗さん、キーボードの藤澤涼架さんの3人体制で活動している。2023年にはNHK紅白歌合戦に初出場した。
 そして、話題になっている「コロンブス」は2024年6月12日から配信開始、同日夜にMVが公開された作品だ。コカ・コーラの「Coke STUDIO」キャンペーンソングとして、タイアップ起用もされていた。

【画像】類人猿に馬車を引かせ、ピアノを教え…実際のMVの様子とレコード会社による謝罪文(8枚)
 しかしながら、一夜明けた13日、MVの内容が問題視される。
 MVは「もしも生きた時代の異なる偉人たちが一緒に旅をしたら?」をテーマに、大森さんがコロンブス、若井さんがナポレオン、藤澤さんがベートーベンに扮して、時代を超えてともに旅をする設定だった。
■MVの内容は…
 3人は類人猿がパーティーをしている家を訪れ、ピアノの弾き方を教えたり、人力車を引かせたり、乗馬を教えたり、類人猿が出演する悲劇『MONKEY ATTACK』を観賞したり、ともに「コロンブスの卵」を立てようとしたり。そしてパーティーを終えたあと、眠る類人猿を横目に、3人はまた次の場所へ向かう……といった構成だった。

 これらの描写について、SNS上では「奴隷商人だったコロンブスを賛美する内容はいかがなものか」「類人猿は先住民をなぞらえているのか」「完全にアウトだろ」といった指摘が相次ぎ、13日午後にはYouTubeに掲載されていたMVは非公開になった。
■各所から謝罪文が出されることに
 公開中止に際して、レコード会社であるユニバーサルミュージック(所属レーベル;EMI Records)と、所属事務所のProject-MGAは連名で、レーベルと事務所でMVを制作したと説明し、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」「当社における公開前の確認が不十分」などと謝罪した。

 その数時間後には、大森さんからも謝罪文が出された。
「類人猿が登場することに関しては、差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりましたが、類人猿を人に見立てたなどの意図は全く無く、ただただ年代の異なる生命がホームパーティーをするというイメージをしておりました」(謝罪文より)
 こうした懸念から、「意図とは異なる伝わり方」を避けるべく、スタッフとの確認を重ねていたといった経緯を説明しつつ、「ある事象を、歴史を彷彿とさせてしまうMVであったというご指摘を真摯に受け止め猛省」しているとした。

 キャンペーンソングとして起用していた日本コカ・コーラも、この日、報道各社に「コカ・コーラ社はいかなる差別も容認しておりません。今回の事態を遺憾に受け止めております」とのコメントを出し、今後は「コロンブス」による広告展開を控えるとした。なおMVの事前確認はしていなかったという。
 ここまでの一連の経緯を見てみると、事後対応については、極めてまっとうな印象を受ける。SNSで炎上状態になってから、非公開までのスピードの速さしかり、謝罪文や企業コメントが出されるタイミングも、比較的迅速と言えるだろう。

 レーベルと所属事務所の謝罪文には、「レーベル・事務所双方の責任を認める」「問題点を具体的に認識している」といった特徴が見られ、これも直後のコメントとしては、おさえるべきポイントをおさえていると感じる。
 また、大森さん自身の言葉で、改めて経緯説明が行われることで、表面的な謝罪のみならず、「MVに込めていた意図」「制作上に懸念があったこと」「その懸念を拭うべく行った対策」「しかしながら、結果として『何を連想させるのか』の配慮に欠けていたこと」などが示されたことも大きい。

 グローバル企業であるコカ・コーラの対応も、比較的早いと言えるだろう。MVの事前確認をしていなかったとなると、炎上して初めて対応を考えたことになる。すでに広告展開しているなか、楽曲使用を取りやめるという判断は、費用面でも重いはずだ。それでもなお「即日中止」を決めたのは、出稿継続がそれだけ大きなリスクだと判断したからだろう。
 ――と、ここまで一連の経緯を振り返ってきた。炎上後の対応が比較的適切に思えるからこそ、より際立ってくるのが、「なぜこのMVが公開に至ったのか」だ。謝罪文での大森さんの言葉を借りると、「意図と異なる形で線で繋がった時に何を連想させるのか」について、関係者全員が想像できなかったとすれば、悲しいかな「クリエイター集団としての敗北」と言わざるを得ない。

 あらゆる歴史的文化への配慮は、いまやクリエイティブ表現に携わるうえで、なくてはならない要素だ。日本国内でも、その文脈から問題視された事例が、過去にいくつも存在する。
 たとえば2016年には、アイドルグループ「欅坂46」の衣装が、ナチス・ドイツの軍服に似ているとして、アメリカのユダヤ系団体が抗議。運営側は「認識不足」を認めて謝罪し、総合プロデューサーの秋元康氏も「ありえない衣装でした。事前報告がなかったので、チェックもできませんでした」としつつ、監督不行き届きだったと謝罪した。

 外国人へのステレオタイプが問題視された事例もある。2014年にANA(全日本空輸)が公開したテレビCMは、お笑い芸人が金髪のカツラに、高い付け鼻をしたシーンが「人種差別的だ」と問題視されて、放送中止となった。
 国内の歴史も、当然ながら軽視できない。2021年に日本テレビの『スッキリ』で、お笑い芸人が、アイヌ民族について「あ、犬」と発言した件は、BPO(放送倫理・番組向上機構)が「明らかな差別感情を含んだもの」として、放送倫理違反との認識を示した。

 いずれのケースも、大勢の人物がかかわっているはずのクリエイティブ表現にもかかわらず、炎上や社会問題に発展した。よく「三人寄れば文殊の知恵」と言うが、プロのクリエイター集団をもってしてもチェック機能に欠け、SNSなどの集合知をもって、初めて問題に気づくというのは、あまりにお粗末ではないか。
■もう1つの疑問「大森さんだけ矢面に立たせてないか?」
 そうした考え方から、今回のコロンブス問題を振り返ると、「そもそも類人猿を出す必要があったのか」との問いに至る。大森さんは、MVの初期構想として「年代別の歴史上の人物」「類人猿」「ホームパーティー」「楽しげなMV」を主なキーワードとして提案したと説明している。

 おそらく、楽曲冒頭の「寄り道をした500万年前」との歌詞から着想を得たものと考えられるが、それ以降の歌詞には関連するフレーズは出てこない。懸念を感じていながらも、あえて類人猿を中心に据え続けるメリットはあったのだろうか。考えれば考えるほど、事前に回避できた「炎上」と思わざるを得ない。
 大森さんが声明を出し、矢面に立つ覚悟を示したことで、むしろ「周囲の人々にも責任がある」と感じる。先ほど、ユニバーサルミュージックとProject-MGAは連名で謝罪文を出したと書いたが、個人名まで書かれているわけではない。会社なので、当たり前ではあるのだが、大森さんひとりでMVを作ったわけではないのもまた、事実だろう。

 動画を非公開にしたから、謝罪したから終わりではない。批判が大森さんらメンバーに集中しないためにも、これから関係者には誠実な対応が求められるだろう。
 メディアも無関係ではない。MV公開直後の13日朝、各局情報番組のエンタメコーナーでは、おおむね「ミセス新PV公開」が好意的に伝えられていた。「尺の埋め草」として都合がよかったのかもしれないが、内容によっては公開しないという判断もできたはずだ。
 また、MV公開を報じた音楽系メディアには、公開中止になった旨を追記するところもあれば、記事そのものを削除した媒体もあった。制作者の責任はもちろんながら、流通者にも責任がある。得意先からの提供素材だからと、安易に右から左へと流す商慣習があるのだとすれば、この際そこも、しっかり見直す必要があるのではないか。

■「炎上するかも」と思った時、言い出せる組織作りを
 もしかしたら重大な問題だと気づいていた人も、中にはいるのかもしれない。しかし集団心理の中で言い出しづらかったり、すでに大金が動いていたり、権限がなかったりなどの理由で、ストップをかけられなかったのだとすれば、その病は深くまで根を張っている。
 そう考えれば、先ほど筆者は「クリエイター集団としての敗北」と書いたが、同時に「会社組織としての敗北」でもあったと言えるのかもしれない。

https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/eef71cb5352c6ce1cd4c9456654f35098c148d0f

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 樺太アイヌ民族の歴史学ぶ ... | トップ | 桜木紫乃さん 『谷から来た女』 »
最新の画像もっと見る

先住民族関連」カテゴリの最新記事