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中曽根元首相を悼む声、複雑な思いも 道内関係者「度量広い」「弟の慰霊碑で涙」「国鉄民営化誤り」

2019-11-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/30 05:00
 中曽根康弘元首相が29日に亡くなり、交流のあった道内の関係者もその政治手腕や人柄をしのんだ。一方、1987年の国鉄分割・民営化はJR不採用問題を生んだほか、今もローカル線の存廃問題を引きずり、複雑な気持ちで中曽根さんの死を受け止める声も出た。
 「スタンスは違ったが、リーダーシップとバランス感覚を持った政治家だった」。横路孝弘元衆院議長(78)は護憲を訴える自身と自主憲法制定を掲げた中曽根さんの違いを認めつつ、死を悼んだ。1977年にはロッキード事件の国会証人喚問で中曽根さんを厳しく追及したが、「私が知事になった時は敬意を払って面会してくれた。度量の広い人だった」と話した。
 後志管内を地盤に自民党中曽根派に所属した佐藤静雄元衆院議員(78)は86年の「死んだふり解散」に伴う衆参同日選で初当選。中曽根さんのライバルの福田赳夫元首相の秘書出身だが「分け隔てなく接してくれた」と懐かしむ。中曽根さんの弟良介さんは、小樽高商(現・小樽商科大)を卒業し、45年に戦死。97年にセミナーで中曽根さんを小樽に招いた際、共に同大構内の慰霊碑を訪れた。「碑に刻まれた弟の名を指でなぞり、涙ぐむ姿が印象に残っている」と振り返った。
 一方、中曽根さんが進めた国鉄分割・民営化は道内では大きな影を落とす。収益基盤の強いJR東日本や東海、西日本に対し、JR北海道は経営難に陥り、10路線13区間を「単独では維持困難」とする。
 高波で被災し、復旧されないまま廃止見通しとなった日高線鵡川―様似間の沿線自治体で唯一、全線復旧を最後まで訴えた日高管内浦河町の池田拓町長は「国会で指摘されていた通りJR北海道は経営難に陥った。数年後に検証するシステムを設けてほしかった」と漏らす。
 来年5月に一部廃止となる札沼線沿線の空知管内浦臼町の岸泰夫前町長(86)も「鉄路は国策に翻弄(ほんろう)された。国が鉄路存続に果たす役割はもっとあった」と複雑な表情で語った。
 民営化は大量のJR不採用問題も生み、訴訟は2010年に和解が成立した。原告団長を務めた元国鉄マンの酒井直昭さん(70)=北見市=は「中曽根さんには生きているうちに民営化が誤りだったと認め、謝罪してほしかった」と無念がる。上川管内音威子府村の国労闘争団団長だった金児順一さん(62)は「道内でも廃線が多く、地方にしわ寄せがきた」と強調した。
 中曽根さんは86年、記者会見で「日本は単一民族国家」と発言。道ウタリ協会(現・道アイヌ協会)などが抗議し、波紋を呼んだ。それから33年、今年5月にはアイヌ民族を先住民族と明記したアイヌ施策推進法が施行され、道アイヌ協会の加藤忠理事長(80)は「時代の変化を感じる」と語る。ただ、今も「アイヌ民族なんていない」との主張はやまず、「中曽根さんに哀悼の意をささげ、多様な民族が真に共生する社会の実現を願う」と話した。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369929

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「中曽根政治」功罪今も 日米「運命共同体」 改憲、引退後も執念

2019-11-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/30 05:00
 29日死去した中曽根康弘元首相は「戦後政治の総決算」を掲げ、戦後5位となる長期政権を築いた。国鉄分割・民営化に代表される改革路線を貫き、日米同盟強化による国際社会への積極的な貢献を目指した。早くから憲法改正を掲げ、引退後も改憲に執念を燃やし続けた中曽根氏の理念は、安倍晋三政権の底流にも受け継がれている。
 「風に向かって走ろうという気持ちだ。とにかく業績を残したい」。1982年11月27日、政権発足の朝にこう語った中曽根氏は、財政出動を抑える「小さな政府」づくりを狙った行政改革を内政の柱に据えた。
 諮問機関を活用して政策の立案、実行を図るトップダウンの手法で、日本電信電話公社、日本専売公社の民営化を断行。源流となったのが、鈴木内閣の行管庁長官として第2次臨時行政調査会(土光敏夫会長)発足に尽力したことだった。
 86年秋には国鉄分割・民営化法が成立。中曽根氏は「一人の解雇者も出さない」と言明していたが、道内を含め地元JRでの採用を求めた国労組合員らが不採用になるケースがあった。現在のJR北海道の経営問題の根本に、当時の制度設計の誤りがあったとの指摘は多い。
 外交ではレーガン米大統領と「ロン・ヤス」と呼び合う親密な関係を構築。「日米両国は運命共同体」「日本列島を不沈空母にする」と発言し、米国が求めていた防衛費増額や対米武器技術供与に踏み切った。
 同時に訴えたのが「国家」の復権だ。首相在職中には改憲にこそ踏み込まなかったものの、戦後歴史教育の見直しを唱え、85年には戦後首相として初めて靖国神社を公式参拝した。
 86年の衆参同日選で自民党が圧勝すると、「中曽根政治の総仕上げ」として税制改革にも力を注いだ。選挙前は「国民が反対し、党員も反対するような大型間接税はやらない」と断言していたが、87年の通常国会に「売上税」と名前を変えた大型間接税法案を提出。自民党内からも猛反発を受けて廃案に追い込まれたものの、後の消費税導入の議論につながった。
 2003年に小泉純一郎首相に引導を渡される形で議員バッジを外した後は自主憲法制定の必要性を公言し、自民党が05年に発表した新憲法草案では前文を担当。15年の改憲派議員の会合にも出席し「できるだけ早期にわれわれの欲する憲法をつくりたい」と訴え、18年5月にも「一日も早い(改憲)実現を望まぬ日はない」とメッセージを寄せていた。
 一方、86年には「日本は単一民族国家」と発言し、アイヌ民族などから批判を浴びた。「中曽根政治」の功罪は、今も日本社会にさまざまな影響を残している。(小林宏彰、佐藤陽介)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369910

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IR見送り苫小牧賛否二分 市長「どうして」 経済界「納得できぬ」 市民団体「賢明」

2019-11-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/30 05:00
 苫小牧市が誘致を目指す、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)について、鈴木直道知事が29日、2021年7月までの国への認定申請を断念する方針を表明した。誘致の旗振り役だった市や地元経済界には落胆や怒りが広がった一方、誘致反対の市民団体などからは評価する声が上がった。
 「非常に残念だし…どうしてかな、という思いがある」。鈴木知事が道議会で見送りを表明してから約1時間後、岩倉博文市長は市役所で行われた記者会見で、知事の決断に首をひねった。
 知事は植苗地区の候補地周辺に希少な動植物が生息する可能性が高いとして「区域認定までに環境への適切な配慮を行うことは不可能」という点を断念の理由に挙げた。岩倉市長は「環境だけなら、いかようにでもなる」と悔しさをにじませた。人口減対策として自身の公約にも掲げたIR誘致を今後も目指すかについては明言を避けたが、観光資源を生かし訪日外国人らの集客を図る市の成長戦略「国際リゾート構想」は取り下げない考えを示した。
 雇用や税収の増加などを期待して経済界でIR誘致の先頭に立ってきた苫小牧統合型リゾート推進協議会の藤田博章会長は「ここにきて見送りというのは納得いかない」。一方で知事が見送りと同時に「来るべき時」のIR挑戦を示唆したことを踏まえ「引き続き誘致活動に取り組む」と述べた。苫小牧商工会議所の宮本知治会頭も「IRの必要性を道民にしっかりと理解してもらい、またチャレンジしていく」と話した。
 観光関係者の落胆も大きい。苫小牧観光協会の市町峰行会長は「IRが観光活性化の起爆剤になると思っていたが…。今後の市民生活の糧をどうしていくか、改めて議論する必要がある」と悔しそう。白老観光協会の福田茂穂会長は来年4月のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」開業に触れ「IRとの相乗効果を期待していただけに残念」と話した。
 「知事に裏切られた思いだ。別の手段も示さずこれだけのチャンスを逃すのは、正しい判断とは思えない」。IR実現を目指して勉強会などを開いてきた市民団体「Catch to IR」の後藤哲人共同代表は語気を強める。意思統一を図れなかった道議会自民会派に対しても「なぜまとまれなかったのか」と批判的だ。
 一方、市民団体「IR苫小牧の住民投票をめざす会」の杉本一共同代表は「環境問題など不安要素が多い中で、誘致を見送るのは賢明な判断」と評価。住民投票を目指す活動については「いったん中止する」と述べ、市が引き続き誘致に取り組むかどうかを見極めた上で今後の対応を決める。
 IR誘致反対の署名約2万筆を集めた市民団体「カジノ(賭博場)誘致に反対する苫小牧市民の会」の篠原昌彦共同代表は「知事は道民の不安を受け止めてくれた」と歓迎。ギャンブル依存症、自然破壊、治安悪化などの懸念はまったく解消されていないとして、大阪や横浜などの市民団体と連携して「日本にカジノをつくらない活動を展開していきたい」と語った。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369874

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アイヌと手携えた「静かな大地」 北海道・静内 多文化共生、150年前の光

2019-11-30 | アイヌ民族関連
毎日新聞2019年11月29日 大阪夕刊
 北海道帯広市出身の芥川賞作家、池澤夏樹さんの「静かな大地」は、明治初期に兵庫県の淡路島から北海道・静内(現新ひだか町)に入植した宗形三郎、志郎兄弟が、先住民族であるアイヌの人々と共に牧場を開き、馬を育てる様子などを描く。静内は池澤さんの先祖ゆかりの地で、自分のルーツをたどる物語でもある。多様なルーツを持つ日本代表の活躍で自国開催のラグビー・ワールドカップが盛り上がるさなか、現地で民族の共生について考えた。【水上由布】
 札幌からバスに揺られること2時間40分。静内は山と海が近い、自然豊かな土地だ。淡路島から入植者の船…
この記事は有料記事です。
残り1000文字(全文1261文字)
https://mainichi.jp/articles/20191129/ddf/012/040/008000c

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アナと雪の女王2 - レビュー

2019-11-30 | 先住民族関連
IGN JAPAN 2019/11/29

『アナと雪の女王』のような作品の続きを作るのは簡単ではない。前作はおとぎ話にありがちな展開を否定し、型破りなディズニープリンセス像を復活させたスマッシュヒット作だった。美しく、広大で、しかしフラストレーションの溜まる続編で、監督のジェニファー・リーとクリス・バックは作品の世界を広げたが、現代を意識した政治的なメッセージは(ポテンシャルはあったが)着地に失敗している。このことは『アナと雪の女王2』全体のメッセージを不明確なものにし、主人公たちの物語と本作で明らかになった過去の事実と矛盾している。
過去へのフラッシュバックシーンを経たのち、前作の直後から幕を開ける『アナと雪の女王2』は勢いのあるスタートを切り、本作の中心となる物語を手際よく紹介する。アレンデールを治めるエルサ(イディナ・メンゼル)と恋人と幸せに暮らすアナ(クリスティン・ベル)は平和なときを過ごしていたが、ある日、謎めいた声がエルサへと呼びかける。この声は最終的にエルサたちを、彼女たちの父親がかつて訪れた魔法の森へと導くことになる。しかし、エルサたちの父親が子供の頃に魔法に触れたことがあったという事実は「では、なぜ前作でエルサを長い間閉じ込めていたのか」という疑問をもたらす。このような物語の矛盾は、『アナと雪の女王』がもともと1本で完結する物語として作られたことを思えば不思議ではないが、気になる点ではある。
『アナと雪の女王2』のアニメーションはどこまでも美しく、アレンデール王国がより広く感じられるだけでなく、人間のキャラクターにはリアリズムとディテールが加わっている。前作ではエルサが誤ってアレンデールに永遠の冬をもたらしたが、本作の舞台は秋だ。紅葉とかぼちゃ畑に彩られたアレンデールは息を飲むほど美しい。アニメーションという観点から言えば、本作は完全な成功と言えるだろう
前半の見どころのひとつは、ジョシュ・ギャッド演じるオラフだ。前作では(時にイラッとさせる)ナイーブな雪だるまとして描かれていたオラフだが、ギャッドと『アナと雪の女王2』の脚本家は彼のキャラクターを180度変え、人生について深い悩みを抱えるキャラクターとして描いている。人生や愛の意味について詩的な言葉を口にするオラフのシーンは本作の見せ場のひとつであり、ギャッドは年を重ねることへの恐怖を実にコミカルに表現している。前作のオラフはいわゆる「お子様向けのキャラクター」だったが、本作で大人も共感できるキャラクターになったことは嬉しいサプライズだった。
オスカー受賞歴のあるソングライター、クリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスは続編でも若い視聴者に勇気を与えるであろう、力強い曲の数々を提供している。
本作にはウィットとユーモアもふんだんにある。ジョナサン・グロフ演じるクリストフはついに歌声を聞かせるチャンスに恵まれ、彼の曲は本作でもっとも笑える場面のひとつだ。しかし、映画の折り返し地点を過ぎると、姉妹のアイデンティティを無理やり森と結びつけようとしたことが映画の楽しさの邪魔をしている。この選択は映画全体のメッセージ性を強めるのではなく、逆に弱めてしまっている。
ネタバレを避けて説明すると、本作には自然と深い繋がりを持つ人々が登場する。彼らが北欧の先住民族サーミを表していることは明らかだ(実際ディズニーは『アナと雪の女王2』を作る前にサーミの人々とコンタクトを取っている)。しかし、残念なことにこれらの人々は帝国主義が原因となった対立を演出するためだけに使われ、意味のあるメッセージを残すことはできていない。
奇妙なことに姉妹が森の精霊を探すくだりは、『アバター 伝説の少年アン』の影響が強く感じられる。同作を観たことがある視聴者は『アナと雪の女王2』の一番のシークレットが『アバター 伝説の少年アン』からの直接的な引用でありながら、同作にあったメッセージ性が抜けていることにがっかりするかもしれない。
総評
『アナと雪の女王2』は野心的な作品であることは間違いない。しかし、他の大きな取り組みと同様、その野心には欠点もある。美しいアレンデールの世界を探索するのは実に楽しいが、最後まで突き詰められていないサブプロットは作品のメッセージ性を損なっている。
※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。
https://jp.ign.com/frozen-2/40010/review/2

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原作は佐々木譲の小説、温泉ドラゴン「五稜郭残党伝」にサヘル・ローズら

2019-11-30 | アイヌ民族関連
ナタリー 11/29(金) 11:30配信
温泉ドラゴン「五稜郭残党伝」が、12月11日から19日まで東京・サンモールスタジオで上演される。
温泉ドラゴンの第14回公演となる本作は、佐々木譲の小説「五稜郭残党伝」(集英社文庫)を原作とした作品。原作では、戊辰戦争末期の北海道を舞台とした物語が展開する。旧幕府軍の蘇武と名木野は、自由を求めて五稜郭の陣を脱出した。2人はアイヌの土地を蹂躙する新政府の画策を知って義憤に燃えるが、彼らの背後には残党狩り部隊が迫り……。
脚本・演出はシライケイタが担当。出演者には温泉ドラゴンのメンバーに加え、サヘル・ローズほかが名を連ねた。
■ 温泉ドラゴン 第14回公演「五稜郭残党伝」
2019年12月11日(水)~19日(木)
東京都 サンモールスタジオ
原作:佐々木譲「五稜郭残党伝」
脚本・演出:シライケイタ
出演:阪本篤、筑波竜一、いわいのふ健 / 植吉、宮崎恵治、五十嵐明、佐藤銀平、斉藤健、吉田裕貴、近藤修大、大塚航二朗、森永友基、山口祥平、遊佐明史 / サヘル・ローズ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191129-00000025-natalies-ent

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【cinema】台湾発のアニメ。平凡な少女の成長にわが身を重ねて

2019-11-30 | 先住民族関連
婦人公論 11/29(金) 7:30配信
◆平凡な少女の成長にわが身を重ねて
台北郊外を舞台に、ひとりの女性の半生を描くアニメ。幼い少女チーは、両親と一緒に下町の幸福路(こうふくろ)に引っ越してきた。幸福って何? と問うチーに、母親は「お腹いっぱい食べられることよ」と答える。素朴で働き者の母親と、稼ぎは少ないが優しい父親に見守られ、元気はつらつ幸せな少女時代を過ごす。チーが生まれたのは、1975年4月5日。それは長らく台湾を統治した介石総統が亡くなった日だった。
本作が初の長編作品になるソン・シンイン監督は、74年台北生まれ。チーの物語は50%ぐらい自分自身のことだと語る。京都大学で映画理論を学んだあと、アメリカで映画修士号を取得し、新聞記者、テレビドラマ脚本家、写真家など、さまざまな職業を経験したソン監督は、短編実写映画制作を経て、12分の短編「幸福路上(原題)」を制作。台北電影奨の最優秀アニメーション賞を受賞したこの作品をもとに4年かけて完成させたのが、本作だ。
小学生のチーの日常と、中学生から大学生へと成長していく過程、そして成人してアメリカに住む姿が、行きつ戻りつ自在に描かれていく。合間にはチーの空想も挿入されて、平凡な少女が成長していくなかでの悩みや葛藤が鮮やかに活写される。
チーの成長物語に、台湾の近現代史がさりげなく織り込まれるのも、本作の見どころだ。小学校時代は台湾語が禁じられ、「北京語を話しなさい」と教師が命令。母方の祖母は、台湾の先住民族のひとつアミ族であり、同級生から「野蛮人」とからかわれる。さらに、厳しく弾圧された学生運動や99年の台湾大地震、そして民主化後の総統、陳水扁(ちんすいへん)や馬英九(ばえいきゅう)も登場する。
また、幸福路の町並みにも心を奪われる。台湾に魅了された人なら誰しも見覚えのある、鉄窓花(てっそうか)。古い集合住宅の窓につけられた、さまざまな装飾が施された鉄格子で、台湾の古い町並みの愛らしさを象徴するものだ。そのほか、タイルの壁やアーケード、チーの家の電化製品や雑貨まで、台湾好きにはたまらないレトロ感あふれるディテールが詰まっていて、楽しい。
いつも迷いながら人生を歩いているチーに深く共感し、自分と重ねて見ていくなかで、最も心打たれるのは、成長した彼女が家族からの支えを実感するとき。おばあちゃんは困ったときにいつも助けてくれたし、亡くなった今でも、空想の中で相談相手になってくれる。医者になって稼げと発破をかけてきた両親も、本当はチーの幸せを心から願っている。
最後に流れる主題歌を歌うのは、台湾の歌姫、ジョリン・ツァイ。自身、実在する幸福路の近くの出身というジョリンが「あの頃の私、元気にしている?」と、ささやくように歌い始めると、映画の感動が静かに心のなかに染みわたっていく。
幸福路のチー
監督・脚本/ソン・シンイン
声の出演/グイ・ルンメイ、チェン・ボージョン、
リャオ・ホェイジェン、ウェイ・ダーション
主題歌/「幸福路上 On Happiness Road」/ジョリン・ツァイ
上映時間/1時間51分 台湾映画
■11月29日より新宿シネマカリテほかにて全国順次公開
片岡真由美
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191129-00001337-fujinjp-life

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長編アニメ『幸福路のチー』のソン監督、制作基盤のない台湾で「独自のアニメ」を創造

2019-11-30 | 先住民族関連
マグミクス 11/29(金) 17:10配信
『ガッチャマン』に夢中な少女が主人公
 タピオカティー、豆花、マンゴーかき氷……、台湾には日本人好みの美味しいスイーツがいっぱい。東日本大震災の際には、台湾から多額の義援金が送られました。台湾は親日国として知られ、日本からの観光客は過去最高を記録しています。
 日本人が親しみを覚える台湾で、女性監督が撮った1本の長編アニメーションが話題を集めています。京都大学への留学経験もあるソン・シンイン(宋欣穎)監督の半自伝的映画、『幸福路のチー』(2019年11月29日より全国順次公開)です。
 1975年生まれの女の子・チーが大人へと成長していく物語ですが、シンプルなキャラクターデザインは、日本人が見てもどこかノスタルジックさを感じさせます。その一方、日本人があまり知らなかった台湾の現代史が、チーの目線を通してリアリティーたっぷりに描かれ、とても見応えのある上映時間111分となっています。
 物語の舞台となるのは、台北の郊外に実在する「幸福路」という下町です。近くには工場が並び、川には廃棄物が散らかり、決して環境のよい街ではありません。裕福ではないチーとその両親は、「幸福路」での新生活をスタート。1949年から続いた戒厳令が1987年にようやく解かれ、民主化へと進んでいく変動の時代を生きることになるのです。
 中華圏の現代史と聞くと小難しく感じてしまうかもしれませんが、そこは想像力旺盛な女の子、チーを中心とした日常生活をユーモラスに描いているので、まったく身構える必要はありません。台湾の先住民族であるアミ族の血を引く祖母、チーが通う小学校の仲間たちとの心温まる交流もファンタジックに表現され、大いに楽しませてくれます。
 少女時代のチーはテレビで放送されるアニメが大好きで、特にSFアニメ『ガッチャマン』に夢中。小学校の同級生である金髪の女の子ベティやいたずら好きな男の子シェン・エンたちと一緒に『ガッチャマン』の主題歌を歌うシーンは、とても心に響きます。
 チーたちは『ガッチャマン』を日本のアニメと知らなかったわけですが、日本のアニメに勇気づけられるチーたちに、多くの日本人も共感を覚えるのではないでしょうか。
台湾独自のアニメを生み出す大変さ
 京都大学に2年間留学し、映画理論を学んだソン監督だけに、日本文化に精通し、日本語もかなり堪能です。もともとは実写映画を撮っていたソン監督ですが、なぜアニメーション制作の基盤のない台湾で、長編アニメを作ろうと思い立ったのでしょうか。来日したソン監督にお話を聞きました。
「きっかけは、イラン出身のマルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』(2007年)というアニメーション映画を観たことでした。『ペルセポリス』は1970年代~80年代のイランで思春期を送った少女の物語でした。それを観て、私も自分自身の体験を映画化することを思いついたんです。
 戒厳令下の台湾で生まれ育った女の子を主人公にすれば、多くの人の共感が得られると考えたんです。社会の変化を描くには実写よりもアニメーションのほうが便利ですし、少女時代の思い出をファンタジックに描くのにも最適です。
 台湾には『スタジオジブリ』や細田守監督のいる『スタジオ地図』のような、きちんとシステムの整ったアニメーションスタジオはまだありません。でも、私は一度決めたら、前に進むしかできない性格なんです(笑)。大変でしたが、いろんな方たちからの支援を受けて、4年がかりで完成させることができたんです」
 製作費約1億8000万円を集め、新しい会社「幸福路映画社」を立ち上げるなど、ソン監督の行動力には目を見張るものがあります。パワーあふれるソン監督ですが、40人ものアニメーターを束ねて、台湾ならではのオリジナルアニメーションを生み出すのは想像以上の苦労があったようです。
「台湾にも若いアニメーターたちはいるんですが、『名探偵コナン』や『鋼の錬金術師』などに憧れてアニメーターになった若いスタッフは、やはり『コナン』や『ハガレン』のようなキャラクターを描きたがるんです。
 また、作画監督はふたりのベテランアニメーターに務めてもらいましたが、彼らは日本や米国のアニメ作品の下請け仕事を長年受けていたこともあって、身についているスタイルを一度忘れてもらうのが大変でした。日本とも米国とも違う、台湾ならではのアニメーション映画を私は作りたかったんです。
 私のイメージに合った絵コンテを描いてもらうのにも、かなりの時間を要しました。例えば、大人になったチーが工場で夜警のアルバイトをしている父親に手づくりのお弁当を届けに行くシーンがあるのですが、『父親が近所のコンビニで弁当を買えばいいのに、主人公はなんでわざわざ手づくり弁当を届けに行くんだ?』と、すぐには理解してもらえませんでした。
 国際結婚したチーは離婚を考えており、老いた父親に相談するつもりでお弁当を届けに行くものの、言い出せずにいる様子をロングショットで描きたかったんです。毎日のように時間をかけて、1シーンごとにスタッフに説明しながらの作業がずっと続きました」
祖母への「後悔」や友達との「思い出」も込められた映像
 映画では、チーとチーを溺愛する祖母との触れ合いや、米兵を父に持つ同級生ベティとの友情がとてもハートフルに描かれています。しかし、ソン監督によると実際は生前の祖母とはあまり仲良くすることができず、ベティのモデルとなった金髪の女の子は、転校後に音信不通となり、再会することはできなかったそうです。
 祖母が元気だった頃にもっと仲良くしておけばよかったというソン監督の後悔や、会えなくなってしまった幼友達との忘れがたい思い出が、映画には込められているようです。
 ソン監督が京都に留学した体験をエッセイにした『いつもひとりだった、京都での日々』(早川書房)も日本で出版されたばかりです。京都でお世話になった下宿先の大家さん、アルバイトしていたカラオケボックスの店長や常連さんたちとの適度な距離感を持った関係性が描かれています。京都の街並を背景にした出会いと別れが、さらりとした文章スタイルで綴られており、『幸福路のチー』と同様に親しみを感じさせつつも、日本人とは微妙に異なる視点が新鮮に感じられます。
●映画『幸福路のチー』
2019年11月29(火)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、京都シネマほか全国順次公開。提供:竹書房、フロンティアワークス / 配給:クレストインターナショナル
(C)Happiness Road Productions Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.
長野辰次
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191129-00010003-magmix-movi

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アマゾンと東南アジアの森林の危機―日本のメディアが報じない本当の理由

2019-11-30 | 先住民族関連
ヤフーニュース 11/29(金) 21:43 (有料記事)
志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
 今年の夏、世界に衝撃を与えた、南米アマゾン熱帯林の大規模火災。地球最大の熱帯雨林の危機は、今年8月にフランスで行われたG7サミットでも最重要課題とされたものの、日本では報道の扱いは小さく、また表面的なものばかりであった。そこで筆者は、現地NGOでの活動歴があり南米の環境問題に詳しいエコロジストの印鑰智哉さんを講師に、勉強会を開催。その内容を有料版で分割して配信してきたが、今回で完結となる。内容は、東南アジアでも森林破壊が進んでいることについて、米環境NGOレインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)の川上豊幸さんのお話と、会場からの質疑応答について。
以下、講演録より。
****
◯東南アジアでも深刻な森林火災!
川上:レインフォレスト・アクション・ネットワークの川上と申します。私たちの団体は東南アジアの、インドネシアの問題にずっと取り組んでいます。 ブラジルの問題は非常に大きな森林火災ということで、メディアにも取り上げられているんですが、実はインドネシアでも同じまではいかないんですが、深刻な森林火災が起きています。そのお話について、簡単に、短めにお話ししたいと思います。
 今日のお話はインドネシアのスマトラ島と、これはボルネオ島について。スマトラ島はこの大きな島。日本よりもちょっと大きいぐらい。日本の1.5倍。こっちは、ボルネオ島自体は2倍ぐらいある大きな島で、森林火災が非常に頻繁に起きております。2015年には大規模な森林火災による煙害が、国際的な問題になりました。シンガポールとかで空港が閉鎖されたりして、大変なことになったというのはご記憶の方もおられると思うんですが、それから比較的、収まっていました。実はインドネシアは毎年、火事が結構起きていまして、エルニーニョ現象が起きる非常に火災が拡大してしまうということがあります。2015年はそのピークだったのですが、今年、またエルニーニョ現象が起きてまして、森林火災の規模が大きくなっています。
 森林破壊の原因では、大きな要因としてパーム油の問題があります。今、パーム油は植物油としては世界的利用されています。パーム油は価格が安く競争力が今、急速に拡大しているからです。植物油は、もともと大豆が多かったんですけれども、今はもうパーム油が最も多い。インドネシアでは、もう一つ、紙パルプのためのプランテーションと呼ばれる大規模な農場による森林破壊も酷い。こうした紙パルプは日本に結構、来ています。(文房具メーカーの)アスクルも売っています。
RAN レインフォレスト・アクション・ネットワーク
@JPNRAN
【NGO共同プレスリリース】新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜 (2019/10/3)
http://
japan.ran.org/?p=1512
>>煙害が深刻化する中 #森林火災 に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようAPPに求めています。#森林保護 #環境

今、スマトラ島のリアウ州プカンバルという都市が森林火災による、煙害に遭っていまして、この都市の向かい側ぐらいがシンガポールなので、そこも煙害になっていまして、非常に深刻な健康被害が起きています。今、森林火災が起きている地域の面積は、32万ヘクタール。東京都の1.5倍。ただ、2015年のほうがやっぱりひどくて、そのときは260万ヘクタールというふうにいわれて。まだ途中なので、もう少し増える可能性があるんです。今、発表で35万ヘクタール。9月だけで11万カ所が燃えていますというふうになっています。
 スマトラ島では、リアウ、ジャンビ、南スマトラとった低地のところが開発されていて、そこが燃えています。農地の割合は、紙パルプ用の木を植えているところが21%、パーム油が37%。です。紙パルプでは、APP社と、エイプリル社が土地を持っていまして、その所有している森林で火災が発生しています。それぞれの会社はどちらもコピー用紙とかで日本に売られていますが、APP社のほうが多くて、実は日本で売られているコピー用紙のトップはこのAPP社だということになっているので、非常に関係性は深いです。パーム油のためのプランテーションは広大です。大きな農地だと5,000ヘクタールぐらいありますので、山手線の内側が全部、農地みたいなのが普通というふうになります。これを集めて、油をつくるわけです。
◯泥炭地が燃え、膨大なCO2を放出
 こうした開発の大きな問題が、泥炭地からのCO2排出です。インドネシアでは、自然に泥炭地が数万年をかけて、土壌にどんどん炭素をためているところがあります。これに火がついちゃいますと、ずっと燃え続けるという問題があります。泥炭地は、「水の森」といわれて、本来は、水がたくさんあって、そこに木が生えています。寿命を迎えるなどして、枯れた木は水の中に埋まって、そのまま、そのまま炭素として、どんどんたまっていって、泥炭地がつくられていく状況があります。
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https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20191129-00153001/

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