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中曽根元首相を悼む声、複雑な思いも 道内関係者「度量広い」「弟の慰霊碑で涙」「国鉄民営化誤り」

2019-11-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 11/30 05:00
 中曽根康弘元首相が29日に亡くなり、交流のあった道内の関係者もその政治手腕や人柄をしのんだ。一方、1987年の国鉄分割・民営化はJR不採用問題を生んだほか、今もローカル線の存廃問題を引きずり、複雑な気持ちで中曽根さんの死を受け止める声も出た。
 「スタンスは違ったが、リーダーシップとバランス感覚を持った政治家だった」。横路孝弘元衆院議長(78)は護憲を訴える自身と自主憲法制定を掲げた中曽根さんの違いを認めつつ、死を悼んだ。1977年にはロッキード事件の国会証人喚問で中曽根さんを厳しく追及したが、「私が知事になった時は敬意を払って面会してくれた。度量の広い人だった」と話した。
 後志管内を地盤に自民党中曽根派に所属した佐藤静雄元衆院議員(78)は86年の「死んだふり解散」に伴う衆参同日選で初当選。中曽根さんのライバルの福田赳夫元首相の秘書出身だが「分け隔てなく接してくれた」と懐かしむ。中曽根さんの弟良介さんは、小樽高商(現・小樽商科大)を卒業し、45年に戦死。97年にセミナーで中曽根さんを小樽に招いた際、共に同大構内の慰霊碑を訪れた。「碑に刻まれた弟の名を指でなぞり、涙ぐむ姿が印象に残っている」と振り返った。
 一方、中曽根さんが進めた国鉄分割・民営化は道内では大きな影を落とす。収益基盤の強いJR東日本や東海、西日本に対し、JR北海道は経営難に陥り、10路線13区間を「単独では維持困難」とする。
 高波で被災し、復旧されないまま廃止見通しとなった日高線鵡川―様似間の沿線自治体で唯一、全線復旧を最後まで訴えた日高管内浦河町の池田拓町長は「国会で指摘されていた通りJR北海道は経営難に陥った。数年後に検証するシステムを設けてほしかった」と漏らす。
 来年5月に一部廃止となる札沼線沿線の空知管内浦臼町の岸泰夫前町長(86)も「鉄路は国策に翻弄(ほんろう)された。国が鉄路存続に果たす役割はもっとあった」と複雑な表情で語った。
 民営化は大量のJR不採用問題も生み、訴訟は2010年に和解が成立した。原告団長を務めた元国鉄マンの酒井直昭さん(70)=北見市=は「中曽根さんには生きているうちに民営化が誤りだったと認め、謝罪してほしかった」と無念がる。上川管内音威子府村の国労闘争団団長だった金児順一さん(62)は「道内でも廃線が多く、地方にしわ寄せがきた」と強調した。
 中曽根さんは86年、記者会見で「日本は単一民族国家」と発言。道ウタリ協会(現・道アイヌ協会)などが抗議し、波紋を呼んだ。それから33年、今年5月にはアイヌ民族を先住民族と明記したアイヌ施策推進法が施行され、道アイヌ協会の加藤忠理事長(80)は「時代の変化を感じる」と語る。ただ、今も「アイヌ民族なんていない」との主張はやまず、「中曽根さんに哀悼の意をささげ、多様な民族が真に共生する社会の実現を願う」と話した。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369929
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