北海道新聞 11/04 05:00
道が、欧米で人気の体験型観光「アドベンチャートラベル(AT)」の国際サミットの2021年の道内開催に向け、誘致活動を活発化させている。観光ガイドの育成など環境整備を急ぐほか、鈴木直道知事も10月末、候補地視察で道内入りしたサミット主催団体トップに開催を強く呼び掛けた。ただ、道内ではATの知名度は低く、訪日観光客を呼び込むには、観光事業者にその利点を周知するなど受け入れの裾野を広げる施策が課題となりそうだ。
10月26日、後志管内ニセコ町。鈴木知事が「北海道はアジア初のサミット開催地にふさわしい」と呼び掛けると、視察に来たサミット主催団体、アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA、本部・米国)のシャノン・ストーウェル最高経営責任者(CEO)は「熱意と運営能力の高さは大変素晴らしい」と好感を示した。
約50カ国から旅行会社の関係者やガイドら数百人の参加が見込まれるサミット開催は道内観光をPRする好機となるため、道は今年に入って誘致活動を本格化。知事は5月、ストーウェル氏を札幌市に招待して道内開催を要請したほか、9月には道幹部を今年のサミット開催地スウェーデンに派遣し、同氏に再び道内開催を呼び掛けた。
さらに道は本年度、ATのガイド育成プログラムの策定にも着手。ATに組み込めるような道内の体験メニューの調査も進めている。道内はもともと自然環境を利用した体験メニューを用意する観光事業者が多いため、国も道の取り組みを支援しており、北海道運輸局は本年度中に、アウトドア活動やアイヌ文化など文化関連の体験メニューなど300件を日本のATモデルとして選定する方向だ。
宗谷管内利尻島でスキーツアーなどを主宰する山岳ガイドの渡辺敏哉さん(50)は「ATサミットを機に自然体験を目的に島を訪れる客が増えてほしい」と期待を寄せる。
ただ、道内の観光事業者からは「既存の体験型観光とATの違いが分からない」と戸惑いも。海外の富裕層は知的好奇心を満たす体験メニューを求める傾向があるとされ、ストーウェル氏も「海外客のニーズをつかむ商品作りが必要だ」と、メニューの質の高さや選択肢の広さを求める。
ATに詳しい北大経済学研究院の平本健太教授は、道内の体験型観光は世界的にまだ知られていないとしつつ、「欧米人らが好む食や文化、遊びの体験メニューを魅力的に組み合わせれば、新たな客層を獲得できる。そのことを道内でまず広める必要がある」と指摘している。(犬飼裕一、長谷川紳二)
<ことば>アドベンチャートラベル(AT) 自然に触れる活動や異文化体験、身体を動かす屋外運動を組み合わせ、時間をかけてゆっくり楽しむ滞在型観光。欧米の富裕層に人気の旅行形態で、滞在が長期に及ぶため、1人当たり観光消費額は通常の旅行者の約2倍になるという試算もある。世界の市場規模は約49兆円とされる。アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)には世界で1400を超える旅行会社や観光団体などが加入している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/361289
道が、欧米で人気の体験型観光「アドベンチャートラベル(AT)」の国際サミットの2021年の道内開催に向け、誘致活動を活発化させている。観光ガイドの育成など環境整備を急ぐほか、鈴木直道知事も10月末、候補地視察で道内入りしたサミット主催団体トップに開催を強く呼び掛けた。ただ、道内ではATの知名度は低く、訪日観光客を呼び込むには、観光事業者にその利点を周知するなど受け入れの裾野を広げる施策が課題となりそうだ。
10月26日、後志管内ニセコ町。鈴木知事が「北海道はアジア初のサミット開催地にふさわしい」と呼び掛けると、視察に来たサミット主催団体、アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA、本部・米国)のシャノン・ストーウェル最高経営責任者(CEO)は「熱意と運営能力の高さは大変素晴らしい」と好感を示した。
約50カ国から旅行会社の関係者やガイドら数百人の参加が見込まれるサミット開催は道内観光をPRする好機となるため、道は今年に入って誘致活動を本格化。知事は5月、ストーウェル氏を札幌市に招待して道内開催を要請したほか、9月には道幹部を今年のサミット開催地スウェーデンに派遣し、同氏に再び道内開催を呼び掛けた。
さらに道は本年度、ATのガイド育成プログラムの策定にも着手。ATに組み込めるような道内の体験メニューの調査も進めている。道内はもともと自然環境を利用した体験メニューを用意する観光事業者が多いため、国も道の取り組みを支援しており、北海道運輸局は本年度中に、アウトドア活動やアイヌ文化など文化関連の体験メニューなど300件を日本のATモデルとして選定する方向だ。
宗谷管内利尻島でスキーツアーなどを主宰する山岳ガイドの渡辺敏哉さん(50)は「ATサミットを機に自然体験を目的に島を訪れる客が増えてほしい」と期待を寄せる。
ただ、道内の観光事業者からは「既存の体験型観光とATの違いが分からない」と戸惑いも。海外の富裕層は知的好奇心を満たす体験メニューを求める傾向があるとされ、ストーウェル氏も「海外客のニーズをつかむ商品作りが必要だ」と、メニューの質の高さや選択肢の広さを求める。
ATに詳しい北大経済学研究院の平本健太教授は、道内の体験型観光は世界的にまだ知られていないとしつつ、「欧米人らが好む食や文化、遊びの体験メニューを魅力的に組み合わせれば、新たな客層を獲得できる。そのことを道内でまず広める必要がある」と指摘している。(犬飼裕一、長谷川紳二)
<ことば>アドベンチャートラベル(AT) 自然に触れる活動や異文化体験、身体を動かす屋外運動を組み合わせ、時間をかけてゆっくり楽しむ滞在型観光。欧米の富裕層に人気の旅行形態で、滞在が長期に及ぶため、1人当たり観光消費額は通常の旅行者の約2倍になるという試算もある。世界の市場規模は約49兆円とされる。アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)には世界で1400を超える旅行会社や観光団体などが加入している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/361289