人工結晶に続き、今日は人造宝石です。
皆さんはイイモリ・ストンをご存知でしょうか?
京セラの「クレサンベール」、再結晶宝石であるイナモリストーンの事ではありません。
それは金沢出身の放射性鉱物研究の先達、飯盛里安博士が研究・製造された人造宝石の事です。
これらは飯盛里安博士が造ったビクトリア・ストンです。石英を主原料として長石、菱苦土石、方解石、蛍石、等を配合して化学成分を定め、これに発色剤として顔料を加え、さらに晶化剤、晶癖調整剤、等を加えて1400℃で溶かし、二日間ほどかけて徐冷して造るそうです。
このビクトリア・ストンはセラフィナイトやチャロアイトやラリマーにも似た不思議な雰囲気の人造宝石です。飯盛博士は他に翡翠に似たメタヒスイやキャッツ・アイ効果のある石等を飯盛研究所(Iimori Laboratory Ltd.)で造られ、それらの石はアイエル・ストン(IL-stone)と総称されました。
飯盛博士は1982年に97歳で亡くなられています。イイモリ・ストンはそれ以降製造される事はなく現在ではレアな石となり、知っている人も少ないと思います。
飯盛里安博士は「金沢ふるさと偉人館」でも展示紹介されていますが、そこでは人造宝石現物を見る事はできません。
私がそれらの人造宝石を初めて見たのは岐阜県の中津川市鉱物博物館です。2003年の事です。ちょうどその頃「飯盛里安博士97年の生涯」という企画展をやっていて、その企画展の記念講演会に何故か私にも招待のハガキが来たのです。中津川市鉱物博物館には複数回訪れていたからかも知れません。
その講演会を聞いた後、展示されていたイイモリ・ストンを見ました。その当時は人工的な鉱物にあまり関心がなかった為、軽く見流してしまいました。残念な事をしてしまったと思います。
その後、池袋ショーで写真のビクトリア・ストンを見つけ入手しました。上の写真がそれです。
人造宝石は人間が造った奇妙な石だと思います。その製法は焼き物の結晶釉に似ています。人造宝石を変なものと見るよりも、鉱物的な美を愛でる趣味的な観点からは、それらは「ただ美しいだけでいい」のかも知れません。