かぶれの世界(新)

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景気動向と在庫循環

2004-09-01 17:46:26 | 社会・経済
4-6月のGDP成長率が予想を大きく下回る前年同期比1.7%に留まり、原油価格の高騰や雇用回復の遅れ、ハイテク市場の先行き需要停滞見込み等による米国経済成長のスローダウン予測と併せて日本経済は調整に入ったという見方が増えている。 この1年経済回復はつかの間の夢だったのか、果たしてこれは調整なのか、更なる回復の道を歩む手前の踊り場なのか多くの人の関心事であり、下期始めに当り私なりに考えを整理しておきたい。

昨年半ばからの景気回復はディジタル家電を中心とする輸出及び設備投資の増加によるものであった。今年に入り国内消費の回復も見られ、今年半ばには失速すると予測された景気見通しが2005年前半まで続くという見方があった。GDP成長率低下は牽引力となる設備投資が伸び悩んだ事が大きく、楽観的な予測に冷水を掛けた結果となった。ここで景気と裏腹の関係にある在庫循環の重要な変化について考察しておく。

4年周期で繰り返す景気循環は通常在庫変動を主要因とする。 ところが、在庫循環をIT財と非IT財に分けて見ると、90年後半から異なる動きをし始めた。 即ち、非IT財はカンバン方式やPOSシステムが精緻化し、日米ともに在庫率(在庫残高/出荷比率)が抑制され4年周期で繰り返された在庫循環が消滅した一方で、3年から4年の周期を持つ残りのIT財の在庫循環が、IT財の設備投資循環と一体化した。 加えてグローバリゼーションを通じて日米のIT設備投資サイクルが連動した結果、通常設備投資サイクル(10年程度)の下で副次的に扱われたIT財の変動が相対的に影響度が高めた。 IT財だけの在庫率循環を見ると依然円形を描く傾向にあるが、ここに来て出荷比在庫率が高まってきており冒頭の先行き弱気な見方の根拠となっているわけである。このIT在庫循環の先行指標として需給バランス(BBレシオ)が低下しており弱気な見方を裏付けている。  

それでは悪いニュースだけかというとそうでもない。原油のスポット価格は既にピークを打ち大幅に下がった。石油の高騰はイラン、ロシア、ベネズエラ等産油国の政情不安に付け込んだ投機的な動きであり、投機が一段落した今後徐々に40ドルを切る適正値に戻っていくだろう。中国政府の経済舵取りは一時の過熱状況から混乱から脱しつつあるように見える。若干不透明なのは米国経済の6割を占める消費支出であり雇用等景気指標を見守る必要があるが、大統領選の最中では悪くとも現状レベルに留まるのではないかと予測している。GDP成長率減速の原因となった日本のIT設備投資は関連指標を見ると依然需要は堅調であり需給のバランスは崩れていない。

このような状況の中、海外のアナリストには最近投資先として新たに「日本買い」を明言するところが出てきた。世界的に回復速度の乱れ・減速が心配されている中、「比較的悪くはない」日本買いを薦めており、消去法的な選択というきらいはあるものの前向きに捉えてよいと考える。 構造改革を断行した結果IT企業の足下の業績は概して好調であり、景気の成り行きに耐えられる余力を持ちながら更なる構造改革が進むと予想されるためである。 総合すると今後の日本経済は若干速度を緩めるものの、設備投資と輸出、国内消費がバランスして2005年中まで継続して回復を続けるものと予想する。


コメント
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