(1)瑞穂の国といわれるほど水資源に恵まれた日本。
雨や雪は、見える水資源だが、今、世界的に注目されているのは“見えない水・仮想水”の概念だ。英語では見えない水ということで、ヴァーチャルウォーターと呼ばれている。
これは、あるモノが製造されるまでに、どれくらいの水資源が使われているかを測る尺度だ。1990年代に英国ロンドン大学で水の移動を研究していたアンソニー・アラン教授がこの概念を世界に広めた。日本では、沖大幹・東京大学教授らが提唱している。
〈例〉ハンバーガー一つを作るのに、いったいどのくらいの水が必要か。正解は、1,000リットル。これは家庭用の風呂の5倍、ペットボトル(500ミリリットル換算)にすると、なんと2,000本なのだ。
(2)なぜこのように大量の水が必要なのだろうか。
それはハンバーガーの製造過程までさかのぼり、それぞれの段階で使用された水の量を調べ、トータルでどのくらいの水が消費されたかを計算するものだ。
ハンバーグのパテの素(もと)になるのは、主に牛肉だ。牛肉のもとは、肉牛だ。肉牛を育てるに、当然、水を飲ませる。彼らのエサである牧草を育てるためにも大量の水が必要だ。さらに、パンの原材料となる小麦などを育てるためにも、やはり大量の水が必要だ。ハンバーガーに挟まれている野菜を育てるにも大量の水が欠かせない。
これらを仮想的(ヴァーチャル)に数値としてとらえ、いかに多くの水資源が消費されているかを、たやすく実感できる概念が仮想水なのだ。
(3)驚くべき数値が見い出される。
コーヒー1杯の仮想水は140リットルだ。単位はミリリットルではない。
オレンジジュースは170リットルだ。
和食を見ても、牛丼1杯が2,000リットル、ざるそばが700リットル、味噌汁1杯が20リットルである(東大・沖研究室)。
(4)日本の食糧自給率(カロリーベース)は4割以下である。つまり、日本の食卓の6割が海外からの輸入で成り立っている。この輸入食料を育てるために使われた仮想水の総量は640億トンの水であり、日本の灌漑用水量590億トン/年をはるかに超えている。
仮想水の概念で各国を比較すると、日本は世界に冠たる水輸入国だ。
(5)では、どんな国から食料とともに仮想水を輸入しているのか。沖研究室の試算によると、例えば次のとおり。
・米国から389億トン/年
・カナダから49億トン/年
・豪州から89億トン/年
・中国から22億トン/年
このように日本の食卓は世界の水資源で支えられている。
日本人が世界の水資源の節約に貢献するためには、まず「食べ残さない」ことだ。
□吉村和就(グローバルウォータ代表)「水輸入大国・日本 ~水に流せない水の話 3~」(週刊金曜日 2017年7月21日号)
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雨や雪は、見える水資源だが、今、世界的に注目されているのは“見えない水・仮想水”の概念だ。英語では見えない水ということで、ヴァーチャルウォーターと呼ばれている。
これは、あるモノが製造されるまでに、どれくらいの水資源が使われているかを測る尺度だ。1990年代に英国ロンドン大学で水の移動を研究していたアンソニー・アラン教授がこの概念を世界に広めた。日本では、沖大幹・東京大学教授らが提唱している。
〈例〉ハンバーガー一つを作るのに、いったいどのくらいの水が必要か。正解は、1,000リットル。これは家庭用の風呂の5倍、ペットボトル(500ミリリットル換算)にすると、なんと2,000本なのだ。
(2)なぜこのように大量の水が必要なのだろうか。
それはハンバーガーの製造過程までさかのぼり、それぞれの段階で使用された水の量を調べ、トータルでどのくらいの水が消費されたかを計算するものだ。
ハンバーグのパテの素(もと)になるのは、主に牛肉だ。牛肉のもとは、肉牛だ。肉牛を育てるに、当然、水を飲ませる。彼らのエサである牧草を育てるためにも大量の水が必要だ。さらに、パンの原材料となる小麦などを育てるためにも、やはり大量の水が必要だ。ハンバーガーに挟まれている野菜を育てるにも大量の水が欠かせない。
これらを仮想的(ヴァーチャル)に数値としてとらえ、いかに多くの水資源が消費されているかを、たやすく実感できる概念が仮想水なのだ。
(3)驚くべき数値が見い出される。
コーヒー1杯の仮想水は140リットルだ。単位はミリリットルではない。
オレンジジュースは170リットルだ。
和食を見ても、牛丼1杯が2,000リットル、ざるそばが700リットル、味噌汁1杯が20リットルである(東大・沖研究室)。
(4)日本の食糧自給率(カロリーベース)は4割以下である。つまり、日本の食卓の6割が海外からの輸入で成り立っている。この輸入食料を育てるために使われた仮想水の総量は640億トンの水であり、日本の灌漑用水量590億トン/年をはるかに超えている。
仮想水の概念で各国を比較すると、日本は世界に冠たる水輸入国だ。
(5)では、どんな国から食料とともに仮想水を輸入しているのか。沖研究室の試算によると、例えば次のとおり。
・米国から389億トン/年
・カナダから49億トン/年
・豪州から89億トン/年
・中国から22億トン/年
このように日本の食卓は世界の水資源で支えられている。
日本人が世界の水資源の節約に貢献するためには、まず「食べ残さない」ことだ。
□吉村和就(グローバルウォータ代表)「水輸入大国・日本 ~水に流せない水の話 3~」(週刊金曜日 2017年7月21日号)
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