語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~

2017年08月13日 | 批評・思想
★片岡剛士『日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店、2010)
 
 なぜ、日本経済は1990年代からかくも長く停滞したのか? これは、なぜ先の大戦で日本が敗北したのか? と並んで、我が国の社会科学研究者に突き付けられた大きな課題である。この課題に対してはすでに膨大な研究がある。
 著者の片岡氏は、そうした研究成果を手際よくかつ慎重に精査しながら、日本経済の停滞の大きな原因は“デフレ”にあり、それをもたらしたのはマクロ経済政策、とりわけ日本銀行の金融政策の失敗であると言う。重厚かつ冷静な実証分析だ。
 今まさに、日本は「失われた20年」を終えられるかどうかの瀬戸際にある。そのさなかに、片岡氏はかつての批判対象であった日本銀行の政策審議委員に就任することとなった。巡り合わせの妙を感じざるを得ない。

□若田部昌澄(早稲田大学政治経済学術院教授)「バブル崩壊後の経済を総括 ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年8月5日号)を引用
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


【佐藤優】トランプを理解するカギ ~彼の信仰、カルヴァン派~

2017年08月13日 | ●佐藤優
 (1)トランプ大統領には思想がある。それも強くある。長老派教会と訳しているが、スコットランドから米国へ来たプレスビテリアン(カルヴァン派の一派)の思想だ。
 この教派の人たちは、生まれる前に、自分はすでに神様に選ばれている、と考えている。神様は、この人は救われる、この人は滅びる、と相手が生まれる前から決めている、と信じている。つまり、人間の運命は、生まれる前から全部決まっているんだ、と考えている。
 で、選ばれた人間は、どんな試練にも耐え抜くことができる、と考えている。だから打たれ強い。そして勤勉だ。
 20世紀以降に登場した米国大統領で、プレスビテリアンだった人はトランプを含めて3人しかいない。一人は、ウッドロー・ウィルソン。彼はみんながムリだと思った国際連盟の設立に固執した。それを正しい理想だと考えたからだ。
 もう一人は、ドワイト・アイゼンハワー。彼はノルマンディー上陸作戦の指揮官だ。あれは誰もが無謀だと思ったが、アイゼンハワーはそれでも決行しなければならないと、第二戦線を開いた。
 ムリだ、無謀だ。そう言われたことでも、自分が正しいと思ったらひるまないでいく。これが長老派の人たちの特徴だ。トランプにはその特徴がある。

 (2)それと同時に、長老派の人は、清い生活をしていれば立派な人間になれる、という発想を持っていない。
 そういう発想を持っているのは、メソジストだ。
 〈例〉ブッシュJr大統領。ひどいアルコール依存症だったのだが、信仰に触れて自分の生活を改めた。リボーン、生まれ変わりだ。メソジストでは、そういうのが重要になる。
 ところが、長老派ではそういうことを全く強調しない。生まれる前から神様に選ばれている。だからマルコ・ルビオ大統領候補とこんなやりとりをした。
 共和党の候補者指名をめざすミシガン州デトロイトでの討論会で、ルビオ候補は
 「あなたは身体は大きいけれど、それにくらべて手は小さいですね。世間で、手が小さい人のことをどういっているか知っていますか?」
と切り出した。それに対してトランプは、
 「ああ、知っているよ。手が小せえ男は、逸物も小せえっていいたいんだろ。大丈夫、俺は人並みだ」
 これが、米国大統領選挙の公式の論戦だったわけだ。米国の歴史の中で、ペニスの大きさが選挙の争点になった、などということは後にも先にもなかった。売り言葉に買い言葉、そんな下品なことはいわない。でも、トランプは違った。下品な奴は下品な対応でいいんだ、俺は大丈夫、神様に選ばれているから・・・・。そいう確信があるのだ。

 (3)だから、トランプを読み解くカギのひとつは、長老派である、ということだ。長老派の人たちはよく働く。トランプもそうだ。彼は働き者だ。とんでもない時間のツイッターも、その時間も働いているということだ。これは長老派の特徴だ。
 しかも、それでなおかつ、トランプは子育ても自分の部屋でやっている。子どもを近くに置いて、24時間、仕事をしている。これは、スコットランド系のお母さんの影響だ。スコットランドでは、ほとんどの人が長老派なのだ。それからトランプは、きかん坊だからということで、子どもの頃、ミリタリー・スクールに入れられている。そこで規律正しい生活と勤勉さを学んでいる。
 そういうトランプだから打たれ強い。どんな状況でも這い上がってくる。それは、自分は必ず成功する、と信じているからだ。だから、よく言えば打たれ強いのだが、悪くいえば傲慢、となる。これが、あまり知られていないトランプの資質なのだ。

□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第1章 地政学から読み解く米国の戦略」の「トランプを理解するカギは、彼の信仰、カルヴァン派である ~過去の大統領ではトランプを含めてわずか3人~」

     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】×宮家邦彦/北朝鮮の核問題、ICBM問題にどう向き合うか

【南雲つぐみ】虫刺されの原因と予防法

2017年08月13日 | 医療・保健・福祉・介護
 強毒を持つ特定外来生物「ヒアリ」が、各地で次々と発見されている。刺されると、激しい痛みやかゆみ、発熱などを引き起こすとして、環境省などが注意を呼び掛けている。また、ウイルスを媒介し感染症を引き起こすマダニは雑木林や田んぼのあぜ道などに広く生息する。【注】
 夏は自然の中に出掛ける機会も増えるが、虫の多い草むらなどに行くときは、繊維の目の詰まった長袖の服や長ズボンを着よう。シャツの裾はズボンの中に入れるのも虫の侵入を防ぐ方法だ。
 特に乳幼児は新陳代謝が活発だ。体温が高く二酸化炭素の排出量が多いので、虫が寄ってきやすい。そこで活躍するのは市販の虫よけスプレーなどだ。これらの商品にはディートという成分(忌避剤)が含まれる。これは虫の感覚をまひさせ、人の出す二酸化炭素や体温を感知できなくさせる作用があるとされる。
 虫刺されの原因の一つに、洗濯物に付いている虫に気付かず、着てしまうことだ。外干しの洗濯物は、取り込むときによく振り払い、畳むときは裏返して、虫の有無を確かめよう。

 【注】
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~

□南雲つぐみ(医学ライター)「虫刺されに注意 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年8月11日)を引用
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン