カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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千島大地震の津波について雑感 津波の素性について

2006-11-16 23:57:27 | インポート

15203700391 昨日、11月15日20時15分頃、千島列島択捉島の東約400キロの地点で、マグニチュード7・9の大きな地震がありました。

この地震で、日本では、北海道の一部で最大震度2を観測しただけで、地震動による被害はなしでしたが、一時、北海道のオホーツク海沿岸と、北海道太平洋側東部に津波警報が、また、北海道の日本海側や、北海道太平洋側西部から東北、関東太平洋沿岸を経て、伊豆諸島、静岡県沿岸にいたる広い地域に津波注意報が出されました。

が、日本には、対して大きな津波はなく、津波警報や津波注意報は、16日午前1時30分までに全て解除されてしまいました。

しかし、この地震による津波で日本国内では、三宅島坪田で、津波注意報が解除された16日午前4時09分に高さ80cmに津波を観測しております。また、津波注意報が出なかった、紀伊半島沿岸や、四国沿岸、沖縄などでも、16日午前中に、津波と見られる潮位の変化を観測しています。小船の転覆などの被害も発生しています。

また、国内ではありませんが、アメリカ西海岸やカナダでは、高さ1メートル50センチを超える津波が押し寄せましたし、ハワイ島では、1m73cmの高さの津波が沿岸に押し寄せ、これらの地域は浸水などの被害も発生しました。

地震が海底の下の浅いところで大きな地震が起こると断層の運動により海底の地盤が隆起したり沈降したりします。この海底の変形にともなって海面が変動し、あたかも池に石を投げ入れた時のように波となって四方に広がっていきます。これが津波となるわけです。

よって、津波は、

①海底の地盤が隆起したり沈降したるする破壊が顕著になること 

②この破壊(地盤が隆起したり沈降したるする)がより広範囲に及ぶこと さらに、海は水と言う液体ですので、比較的ゆっくりした海底の破壊のほうが、海が持つ固有周期(一番揺れやすい波の周期です)と、一致(共鳴)しやすく、よりいっそう津波自体高くなる。

③水深が深い海底で発生した津波であるほど、その津波のエネルギーが大きくなり波自体減衰しにくく(津波それ自体、海底まで及ぶ波で、波長が通常のうねりと比べると数10倍長いので、波自体のエネルギーが大きく、遠方にあまり減衰しないで長い時間にわたり、伝わります。)より遠方まで長時間伝わる

④津波は海底の水深が深いほど、その移動速度が速い。

⑤津波が伝搬する秒速は g を重力加速度、d を水深とした場合、次式で算出する。

sqrt{g [rm{m/sec^2}] times d [rm{m}]}※インターネットフリー百貨辞典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用です。

以上の特徴を併せ持つものです。

津波が発生する様子を気象庁HP引用図をご覧いただきましょう。

Tsunami

このため、津波は、水深5000メートル海上では、時速800キロ近くのジェット機並みの速度ですが、陸地に近ずくとその移動速度は低下するものの、海岸沿い付近でも高速道路の自動車並みの早いスピードでやってきます。海底が浅くなるほど、津波の波高は高まるようになります。これは、海上で通常発生する波と同じです。

海岸に波が到達すると、海岸から沖合いに反射する波が発生しますが、

⑥津波は通常の波よりエネルギーがある分、この海岸から沖合いに反射する部分のエネルギーも大きく、

⑦遠浅の海岸や入り江など、特に、周囲を陸地で囲まれている湾などは、この沖合いに反射する波が幾通りにも発生し、津波自体なかなか収まらない特性があります

こういう津波の特性のため、

⑧通常、津波は、第1波より後続の波の部分のほうが波高が高くなるものですし、

1854年の安政南海地震発生に際して、大阪湾では⑦の津波の特性のため、津波が繰り返し沿岸部に押し寄せて、大阪では、津波でも甚大な被害となりました。

以上の①から⑤の特性を持つ津波ですが、通常、今回の地震とほぼ同規模な、マグニチュード8クラスの自身になると、およそ100キロ四方の地殻が破壊されますが、この破壊が、海底の地盤が隆起したり沈降したりする部分が顕著になる破壊をしなかったか、その破壊の仕方が、地震(すなわち津波)を起こすエネルギーが日本に行きにくい仕方であった、どちらかのために、さほど、津波がやってこなかった と言えます。

ただ、前記したような、三宅島坪田で、津波注意報が解除された16日午前4時09分に高さ80cmに津波を観測したり。また、津波注意報が出なかった、紀伊半島沿岸や、四国沿岸、沖縄などでも、16日午前中に、津波と見られる潮位の変化を観測して、小船の転覆などの被害も発生した点ですが、日本列島の太平洋側の海岸部での地形的特性によるものと思われますね。

すなわち、陸地に近い部分に遠浅の水深となっていますが、少し離れた海上では、急に水深が深くなる海底の地形となっていますので、前記した津波の特性④~⑦により、陸地に近い部分で、海岸から沖合いに反射する津波がいつまでも続いてしまったことと、そこに、水深の深い部分を進む津波とと比較的浅い部分を進む津波が干渉・屈折をおこして、局地的に津波の波高が高まり、前記した海岸から沖合いに反射する津波と衝突して更に津波の波高を高めて、発生時間を長引かせたこと によると推測されます。

気象庁の津波予報は、地震発生から約2分で出されることは大変評価いたしますが、津波は局地性が非常に強い点を充分に表現することは、まだまた不十分です。

気象庁の津波予報も、数値予報と同じ、その土地の特性に応じて 翻訳する 必要がありますね。