西新宿の白龍といえば、ラーメン喰いの玄人には、トマト湯麺で知られる名店である。が、信じられないことに、年に一度ぐらいだろうか、ここでジャズリスナーの玄人であればあるほど驚愕するような、すごいメンツのライブが秘密裏に行われるのである。
ピアノ、山下洋輔:、ドラム:村上ポンタ秀一、ベース:坂井紅介という日本のジャズ界を代表するようなメンバーが、なぜかラーメン屋でライブ。ほとんど山下洋輔が弾くピアノに手が触れられるような距離で、ノーPAで、しかもトマト湯麺やカレーライスを食べながら聴ける、という、信じられない素晴らしいライブ、これに家族で出かけてきた。
実は白龍で、このトリオでのライブを聴くのは三回目なんだが、今回は特に素晴らしかった。山下洋輔の弾くベーゼンは、ヴィンテージならではの素晴らしい響きで歌い、応えるポンタさんのドラムは冴えわたり、紅介氏は鳥肌の立つようなウォーキングベースを満面の笑みで鳴らす。山下洋輔が、こういった場所でやるのは本人曰くニューヨークぐらいだし、セットの最初の曲はフリージャズだが、その後はリズマニングとか、ストレート・ノーチェイサーとか、チェニジアの夜とか、ステラ・バイ・スターライトとか、もう誰もが知っているようなベタといっていいようなスタンダードジャズばかりをやることの非常に珍しいはずだ。第二部にはトランペットの方と笛の方もゲスト参加で、そうなると三人がさ、っとフォーメーションを変えるんだよな。このあたり、ほんとうに近くで見れば見るほどミュージシャン同志のテレパシーがどう発信/受信されているかがわかって、本当に幸福だ。ホールでしかみられないような組み合わせのメンバーだが、ホールで見ては、このテレパシーは関知できまい。
僕が特に感銘を受けたのは、一部の比較的最初の方に演奏された、ジャズスバラードの名曲である「ミスティ」である。この美しい耽美的なバラードが、このメンバーで演奏されると凄絶なまでの美しさとなって、言ってみれば炎上して崩れ落ちる吉原で花魁と一緒にいるような気持ちになる。美とは死と隣り合わせであって、その毒は限りなく美しく響く。ベーゼンの荘厳な低音と抜けるような高音、ポンタのブラシとマレットによる柔らかなのに刺激的なアンヴィヴァレントな愉楽、遊技のようなメロディとインプロヴィゼイションをすべて受け止めながら、タップリとしかし自らも悦楽を味わうベース。ああ、これは最上のジャズバラードではないだろうか、と聴いていて、全身がすべて液体になりそうになった。これに似た感動を得たものでは、ライブではなくてレコードだったが、2007年に惜しくも亡くなった山下洋輔の盟友でもあるドラマー富樫雅彦の「バラード」というアルバムである。
実は白龍のライブでも、私は誰よりもいい席にいた。バンドメンバー達の真正面、一番近い席である。この幸福を音楽の女神に感謝したいと思うし、音楽へなんとか、恩返しをしたいと思う。
このライブについては、妻もブログで書いていますので、
そちらもぜひご覧ください。
響けブログ
http://blog.goo.ne.jp/hibikeblog/e/12a906ed86ba96109388995b24347ad9
ピアノ、山下洋輔:、ドラム:村上ポンタ秀一、ベース:坂井紅介という日本のジャズ界を代表するようなメンバーが、なぜかラーメン屋でライブ。ほとんど山下洋輔が弾くピアノに手が触れられるような距離で、ノーPAで、しかもトマト湯麺やカレーライスを食べながら聴ける、という、信じられない素晴らしいライブ、これに家族で出かけてきた。
実は白龍で、このトリオでのライブを聴くのは三回目なんだが、今回は特に素晴らしかった。山下洋輔の弾くベーゼンは、ヴィンテージならではの素晴らしい響きで歌い、応えるポンタさんのドラムは冴えわたり、紅介氏は鳥肌の立つようなウォーキングベースを満面の笑みで鳴らす。山下洋輔が、こういった場所でやるのは本人曰くニューヨークぐらいだし、セットの最初の曲はフリージャズだが、その後はリズマニングとか、ストレート・ノーチェイサーとか、チェニジアの夜とか、ステラ・バイ・スターライトとか、もう誰もが知っているようなベタといっていいようなスタンダードジャズばかりをやることの非常に珍しいはずだ。第二部にはトランペットの方と笛の方もゲスト参加で、そうなると三人がさ、っとフォーメーションを変えるんだよな。このあたり、ほんとうに近くで見れば見るほどミュージシャン同志のテレパシーがどう発信/受信されているかがわかって、本当に幸福だ。ホールでしかみられないような組み合わせのメンバーだが、ホールで見ては、このテレパシーは関知できまい。
僕が特に感銘を受けたのは、一部の比較的最初の方に演奏された、ジャズスバラードの名曲である「ミスティ」である。この美しい耽美的なバラードが、このメンバーで演奏されると凄絶なまでの美しさとなって、言ってみれば炎上して崩れ落ちる吉原で花魁と一緒にいるような気持ちになる。美とは死と隣り合わせであって、その毒は限りなく美しく響く。ベーゼンの荘厳な低音と抜けるような高音、ポンタのブラシとマレットによる柔らかなのに刺激的なアンヴィヴァレントな愉楽、遊技のようなメロディとインプロヴィゼイションをすべて受け止めながら、タップリとしかし自らも悦楽を味わうベース。ああ、これは最上のジャズバラードではないだろうか、と聴いていて、全身がすべて液体になりそうになった。これに似た感動を得たものでは、ライブではなくてレコードだったが、2007年に惜しくも亡くなった山下洋輔の盟友でもあるドラマー富樫雅彦の「バラード」というアルバムである。
実は白龍のライブでも、私は誰よりもいい席にいた。バンドメンバー達の真正面、一番近い席である。この幸福を音楽の女神に感謝したいと思うし、音楽へなんとか、恩返しをしたいと思う。
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