ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

限界を感じて・・・帰路

2015年04月06日 00時16分43秒 | Weblog
行者小屋に着いた時は、すでに15時を過ぎていた。
北沢コースを辿っても、美濃戸口までは2時間30分はかかるだろう。
だが、林道までなら1時間あれば何とか着けるし、そこまで出られれば何の心配もない。「よっしゃ、飯を食べるか。」
食事と言ってもいつものカップ麺だ(笑)。

ガサゴソとザックからコッヘルとバーナーを取り出し、お湯を沸かし始めた。
今回はカレー味のカップヌードル。
たかがカップ麺であるはずなのだが、今日に限ってはスペシャルな感じがした。
「やっと食べられるのか・・・はぁ~長かったな・・・」
そんな思いだった。

朝、ここに来た時にはテントは5~6張りはあっただろう。
今はすべて撤収されており、誰もいない。
熱いスープを一口すする。
そして麺を一口。
「がぁーっ!うっめぇー!!」
どうせ誰もいないのだ。
でかい声で言ってやった。

大きな声を出したのは、安堵感からだけではなかった。
あの時の自分の感情を言葉や文章で表現することは難しいが、「むなしさ」の様なものがあったからだった。
計画していた通りの縦走ができなかったこと。
新雪に阻まれ続け、体力的に厳しかったこと。
地蔵の頭から無理に横岳に向かったこと。
本当に死ぬんじゃないかと思った程きつかったポイントがあったこと。
総じて言えば、己の弱さをまざまざと痛烈に感じたこと。

そんな複雑に絡み合った「負の思い」が一気に爆発したのだ。
だからあの時のカップ麺は涙が出そうになる程美味かった。

最後の1時間はヘッデンを灯し、とぼとぼと歩いた。
歩きながら考えた。
「行くべきじゃなかった。地蔵の頭から赤岳に向かうべきだった。何故あのとき俺は無理をして・・・。完全な判断の誤りだ。」
何度も何度も同じことを考えながら独り雪道を歩いた。

美濃戸口には19時頃着いた。
仮眠のできる部屋に入り、あとは眠るだけなのだが、疲れているはずの体は目を閉じても睡魔が来ず、頭の中は今日一日の出来事がグルグルと回っていた。
「こんなこともあるさ」と、いくらポジティブに考えようとしても無駄だった。
経験、技術、知識、体力、そのどれをとっても自身の限界を感じざるを得なかった。

「そうだ、家にメール(ライン)を出さなきゃな・・・」
『さっき、美濃戸口に着いた。何とか無事下山した。明日帰る。』

何とか無事下山。
苦笑いをしてしまった。
でも、家族にはこれでいい。