もうすぐ「天狗の鼻」というところで一息入れた。
特に疲労があったわけではないが、何故かこの強風の中で煙草を吸ってみたくなったのだ。
わかりきったことであったが、ライターの火が着かない。
風下に体を向け、ジャケットで周囲を覆い防風効果を高めても強風には勝てなかった。
こうなると意地でも吸ってやろうと思うが、何度チャレンジしてもダメだった。
「そっか、強風が弱まる一瞬の刹那を狙って・・・。」
成功した。
グローブを外さなければ着火できないため、手首から先がかじかみ、煙草を挟んでいる指の感覚が無くなってきた。
意地でも一本吸ってやろうと思った。
「美味い! 寒すぎて美味くないけど・・・美味い!」
ついでにチョコレートも食べた。
顔面が寒さで強ばっている。
恥ずかしい話だが、チョコを口に入れ、口を閉じて溶かしている途中で口を開けると瞬時によだれが流れ出し、そのよだれが強風に乗って飛ばされて行く。
「美味い! 甘すぎるけど今は美味い!」
ルートが明確になったという安心感から気持ちにゆとりが出てきたんだろう。
そう、もう慌てる必要などないんだ。
慎重に登ればそれでいい。
ここまで登ってきて何となくではあるが分かってきたことがあった。
雪面の見分け方だ。
つまり、この雪面であればそれほど埋もれることはないだろう。
ここはやばそうだ。腰くらいまで埋もれてしまうかも知れない。
100%の確証ではないが、徐々に的中してきた。
表面が氷のようになっていれば誰でも分かるだろうが、たとえその様な表面でなくてもだいだいの見分けがついてきた。
そしてそれ以降はかなりスムーズな雪面登攀をすることができた。
さぁ、天狗の鼻を越えよう。
よりによって強風がまともに当たる西側をまわらなければならない。
足下も岩だらけだった。
一歩ずつ慎重に進んだ。
ゆっくりと三点支持で行くと、その先にPEAKと思われる柱が見えた。
「もう少し・・・。」
左は岩の壁、そして右は谷。
ここは決して慌ててはならないポイントだ。
岩の上にアイゼンを乗せる時も、一発で乗せて越えるのではなく、二・三度踏み直すようにしてグリップを確認した。
風が強い。
幾度となく煽られながら一歩ずつ・・・。
ちょうどその時だった。
自分のすぐ右手横、数十メートル先の谷間をヘリコプターが飛んで行った。
おそらくは黒百合ヒュッテに向かっているのだろう。
気持ちにそれほどの余裕はなかったのだが、パイロットに手を振った。
パイロットの方もそれに気付いてか手を振ってくれた。
こんな強風の日に天狗の鼻にへばりついている馬鹿は自分一人だけだし、いくら青いジャケットとは言え目立っているんだろうなぁ(笑)。
ヘリが通り過ぎ、再びPEAKに向け登りだした。
「あと5分・・・かな。」
アイゼンの爪が硬い雪面をほどよく噛んでくれている。
ピッケルのスピッツェもいい感じで刺さる。
11時09分。
東天狗岳、標高2646メートルに登頂。
所要時間、1時間45分。
自分の他は誰もいない
いい歳をして思わずバンザイをしてしまった(笑)。
特に疲労があったわけではないが、何故かこの強風の中で煙草を吸ってみたくなったのだ。
わかりきったことであったが、ライターの火が着かない。
風下に体を向け、ジャケットで周囲を覆い防風効果を高めても強風には勝てなかった。
こうなると意地でも吸ってやろうと思うが、何度チャレンジしてもダメだった。
「そっか、強風が弱まる一瞬の刹那を狙って・・・。」
成功した。
グローブを外さなければ着火できないため、手首から先がかじかみ、煙草を挟んでいる指の感覚が無くなってきた。
意地でも一本吸ってやろうと思った。
「美味い! 寒すぎて美味くないけど・・・美味い!」
ついでにチョコレートも食べた。
顔面が寒さで強ばっている。
恥ずかしい話だが、チョコを口に入れ、口を閉じて溶かしている途中で口を開けると瞬時によだれが流れ出し、そのよだれが強風に乗って飛ばされて行く。
「美味い! 甘すぎるけど今は美味い!」
ルートが明確になったという安心感から気持ちにゆとりが出てきたんだろう。
そう、もう慌てる必要などないんだ。
慎重に登ればそれでいい。
ここまで登ってきて何となくではあるが分かってきたことがあった。
雪面の見分け方だ。
つまり、この雪面であればそれほど埋もれることはないだろう。
ここはやばそうだ。腰くらいまで埋もれてしまうかも知れない。
100%の確証ではないが、徐々に的中してきた。
表面が氷のようになっていれば誰でも分かるだろうが、たとえその様な表面でなくてもだいだいの見分けがついてきた。
そしてそれ以降はかなりスムーズな雪面登攀をすることができた。
さぁ、天狗の鼻を越えよう。
よりによって強風がまともに当たる西側をまわらなければならない。
足下も岩だらけだった。
一歩ずつ慎重に進んだ。
ゆっくりと三点支持で行くと、その先にPEAKと思われる柱が見えた。
「もう少し・・・。」
左は岩の壁、そして右は谷。
ここは決して慌ててはならないポイントだ。
岩の上にアイゼンを乗せる時も、一発で乗せて越えるのではなく、二・三度踏み直すようにしてグリップを確認した。
風が強い。
幾度となく煽られながら一歩ずつ・・・。
ちょうどその時だった。
自分のすぐ右手横、数十メートル先の谷間をヘリコプターが飛んで行った。
おそらくは黒百合ヒュッテに向かっているのだろう。
気持ちにそれほどの余裕はなかったのだが、パイロットに手を振った。
パイロットの方もそれに気付いてか手を振ってくれた。
こんな強風の日に天狗の鼻にへばりついている馬鹿は自分一人だけだし、いくら青いジャケットとは言え目立っているんだろうなぁ(笑)。
ヘリが通り過ぎ、再びPEAKに向け登りだした。
「あと5分・・・かな。」
アイゼンの爪が硬い雪面をほどよく噛んでくれている。
ピッケルのスピッツェもいい感じで刺さる。
11時09分。
東天狗岳、標高2646メートルに登頂。
所要時間、1時間45分。
自分の他は誰もいない
いい歳をして思わずバンザイをしてしまった(笑)。