晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

大唐内のこと(97) 丸山とイモリ村-34 6/20

2015-06-20 | 大唐内のこと

2015.6.20(土)曇り 丸山の地質

 さていよいよサンドラ岩に向かうことにする。実は南面からサンドラ岩に取り付くには岩壁の裾を若狭側に捲いて、主稜線から二つ目の尾根のところから取り付くのが最も安全だ。始めてサンドラ岩に取り付いたときには、壁のど真ん中を灌木伝いにトラバースしたのだが、進退窮まって退却した憶えがある。サンドラ岩4回目の山行でようやく安全で確実なルートを確立することが出来た。今回安全のためアンザイレン(ロープを結び合うこと)したが、経験豊富な登山者であれば不要かもしれない。最もヘルメットは必携である。

岩とガレの境部分から尾根に這い上がる
 尾根に登り切ったところが、サンドラ岩の観察には最も適した地点である。小滝先生はハンマやルーペを取り出し、観察に夢中である。その間2,30分だろうか、やおら「結論が出ました、やはりサンドラ岩は柱状節理ですネ」という答えであった。「永年気になっていたことがはっきりしてスッキリしました」と満足そうである。なぜ枕状溶岩でなく柱状節理と言えるのか詳しく説明していただいた。
 枕状溶岩というのは海底で溶岩が海水によって急激に冷やされる。従って海水と接している表面が硬く殻状になる。しかしまだ内部はドロドロの溶岩なので先端からトコロテンのように流れ出し再度冷やされて殻が出来るというように成長していく。ハワイ沖の海底火山の様子を映した映像を見たことがあるが、生き物のようにどんどん成長していくのだ。この成長する際に周囲に縦の皺というか擦痕が現れるという。周辺部は殻状の硬い組織となり、内部と明確に区別できる。また断面には放射状になった気泡のあとや放射状の割れ目が走り、キュウリを輪切りにしたような感じになる。その断面は楕円の不規則な形となっている。だからこそ枕状と呼ばれる所以なのだろう。

調査中の小滝先生、白い苔の部分に見える割れ目が冷却節理。
 確かに遠目にサンドラ岩を眺めたとき玄武洞のようなきりりとした柱状節理とは違ったものに見える。節理は水平に走っているし、どてんとした枕のように見えるのだ。だが間近にその岩を観察すると、上記の枕状溶岩の形質とはまるで違っているのだ。つまりサンドラ岩には外殻は無く、断面は均一であり、放射状に並んだ気泡も見当たらない。表面の縦皺もなく、周囲は曲線ではなく直線的な六角形をなしている。そして薄く剥離しているのは、輪切りに節理があるためで、これは柱状節理の特徴とされている。「冷却節理というやつですか」ときくと、「そのとおり」と答えて怪訝な顔をされた。わたしだって少しは予習してきたのだ。そうこうしているうちに厚さ4cm径40cmぐらいだろうか恰好のサンプルを見つけた。サンドラ岩の破片は採集していたが節理そのものは持っていない。持ち上げるとなんとか運べそうだ。片手にぶら下げたまま、灌木伝いに頂上へ向かう。

頂上で持ち上がったサンドラ岩をパチリ、よくぞ撮っておいた。その理由は次回。
 頂上では昼食をとりながら、先生のフルート演奏の話やネパールでのボランティア活動のお話を聞く。火山の研究だけで飛び回っておられるのかと思っていたら意外な一面を見せられ驚いてしまった。つづく

【作業日誌 6/19】何鹿グンの橋、もう少しで完成というとき雨が降ってきた。


 

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