東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

至高のエトワール

2015年03月24日 22時56分20秒 | 映画

 『至高のエトワール』、先日見た映画です。2013年に惜しまれつつ引退したバレリーナ、アニエス・ルテステュのドキュメンタリー。なんだか聞いただけでも凄そうなタイトルです。至高と究極とか、簡単に言うけれでもそんなに簡単にあるわけがないからそう呼ばれるわけで。しかし実際その映像を見ると、そう言いたくなる気持ちもわかる、そんな映像満載の映画でした。

 そもそもエトワールとは何か。フランス語で「星」を意味する単語ですが、バレエ好きな人なら、パリオペラ座のトップバレエダンサーのこととピンとくるでしょう。しかし、単に「トップスター」という意味で使われる訳ではなく、れっきとした地位、資格なのです。オペラ座には下からカドリーユ、コリフェ、スジェ、プルミエ・ダンスール(女性はプルミエール・ダンスーズ)、そして最上位のエトワールという、厳然としたヒエラルキーがあり、一年に一度のコンクール形式昇格試験によって勝ち取っていくのですが、エトワールだけは劇場側の任命を待たなければなりません。つまりエトワール級の活躍をしていてもまだエトワールではない、そういうことがあるのです。

 本ドキュメンタリーの主役、アニエスは、踊り自体も勿論ですが、ちょっとした仕草や表情、目線にも知性や色気を感じさせる希有なダンサーです。たまに「舞台の上では凄いオーラを放っているのに、舞台を降りたら普通の人」みたいな芸能人の話を聞く事がありますが、アニエスはその逆で、映像を見る限り、踊っていない時でもただならぬオーラを感じます。いわゆる「華がある」人です。しかし、この映画の中には出て来ませんが、プルミエール・ダンスーズまでの昇格は順調そのものだったものの、そこからエトワールに上がるまでに、なんと4年の月日がかかったとのことです。

 そんな苦労話はここでは一切出て来ませんが、それを知った上で彼女の深みある舞台を見ると、また違った思いが湧いてきます。バレエファンの方、必見の一本です。

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