ジャコウアゲハ観察記（その２４１）

『ジャコウアゲハ観察記（その２３９）』で取り上げた卵は，たまたま葉の表側に産み付けられたものでした。撮影には好都合だったのですが，表側という環境は卵自身の孵化にとってなにか影響はないのでしょうか。

じつは，なんらかの影響があるとしか思えない事実に出くわすことになりました。それは，太陽の日差しなり雨なりの気象環境に関してです。ただ，これは推測の域を出ません。

二枚の葉の表に産み付けられた卵は，それぞれ三個。ほぼ同じ時期に孵化すると予想していましたが，そうはならず，どちらの葉とも一個が孵化に至らなかったのです。

一つの葉の例です。二つの卵からは幼虫が出ているのに，一個だけ液体が見えるだけ。少なくとも，この段階では幼虫のからだが見えていないといけない筈。

一日経つと，液体が激減しています。殻をとおして液体の一部が蒸発していったのです。

もう一つの葉を見てみましょう。 上の例と同じように，一つの卵に液体が見えます。

一日経っても，液体の様子には変化が見えません。右端の卵の殻がなくなっているのは落下したか，あるいは幼虫に食べられたか，でしょう。 

産卵後，雨も降り，真夏日もありました。確信はありませんが，こうした天候に災いされたと思うのです。合計六個のうち二個が孵化しないという事態は，やはり厳しいとしか言いようがありません。葉の裏に産み付けるのは理に叶っているのでしょう。 

 

ハグロハバチの幼虫の脱皮

ハグロハバチの幼虫については，過去に一度取り上げたことがあります。この程，この幼虫をギシギシの葉で見かけました。ウォーキング中，ギシギシやスイバの食痕をたよりにしながらベニシジミの幼虫を探していると，いたのです。

ギシギシはハグロバチの幼虫の食草なので，なんらふしぎではありませんが，偶然のことながら脱皮直後だったので，殊のほか印象に残ったというわけです。

ちょうど葉の縁にいて，表側から裏側へと移りながら脱皮をしたようです。脱皮した直後は，からだを覆う皮に余裕があります。それが皺になって見えます。

体長は１ｃｍといったところでしょうか。

尾脚辺りに脱ぎ捨てられた皮がかたまっています。からだの色の，なんと初々しいこと！　 

他の株で，数匹見かけました。そこでも，脱ぎ終わった皮を発見しました。食痕は虫の居場所を物語っているわけで，探索のいい手がかりになります。この日は，ベニシジミの幼虫は見当たりませんでした。いつものように成虫は数匹見ましたが。