自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その244)

2013-07-09 | ジャコウアゲハ

7月7日(日)。

ジャコウアゲハが我が家の『アゲハ庭園』を訪れています。今もと言いますか,まだまだと言いますか,最盛期は過ぎましたがずっと飛来します。一化を終える成虫が,子孫を残すために必死に食草を探し求めているのです。飛翔する姿を見ると,アゲハの気持ちがなんとなくわかります。

ところで,産卵場所のあいまいさについては既に書いたことなのですが,繰り返し触れておきます。ウマノスズクサ以外に産卵することが度々あります。それは他の葉であったり,植木鉢であったり,竹であったり,木であったりします。

たいへんあいまいなところがおもしろい事実でもあります。その箇所を整理してみると,納得のいく理由が見つかりそうな気がします。

その1。ウマノスズクサから遠く離れた箇所でなく,ごく近いとことであること。竹や木は,植木鉢に挿した支柱です。植木鉢は食草を植えた容器。他の葉であっても,至近距離にあり,そこにたくさん産卵するわけではありません。つまり,食草を判別する前肢先が,最適場所辺りでかなり大まかに機能しているようなのです。

その2。竹は,枯れたもの,生のものの両方です。木は肌が焦げ茶色をしています。このことから,アゲハが目で色を確認しながら産卵場所を見つけ出しているわけではないと,予想できます。それにしても,こんなところに産み付けられた卵は,食草の場合と同じように順調に孵化に向かうのでしょうか。

案の定,竹に産み付けられた卵が孵化しないまま,死に絶えてしまった例を見ました。

食草以外にもまちがって産卵する例があることからみると,ウマノスズクサの成分であるアリストロキア酸を,紙にでも塗っていれば,そこに産卵するように思われます。紙の色やかたち,大きさについては,一考を要するでしょう。もっとも,そんなことは研究者が明らかにしているはず。 

産卵行動やその結果を観察していると,いくらでも発見があります。観察に飽きることはありません。

 


キアゲハ,ハナウドに産卵(孵化後 ~その13~)

2013-07-09 | キアゲハ

キアゲハの蛹化を観察していて,思いがけない事実に遭遇しました。

大抵の蛹は黄緑がかった色をしているのに,たった一つ褐色個体が現れたのです。蛹のある場所は,室内にある戸の外枠。色は茶色です。保護色なのでしょうか。

それにしてもなぜ,こんなことが起こったのでしょうか。二色の個体群では,なにが違っているのでしょうか。とてもふしぎです。

ところが,一度あることは二度あるという格言の好例でしょうか,もう一個体同じ褐色のものが出てきたのです。蛹がからだを固定した場所は,緑色がかった草の茎。直径数mmの細い茎です。ということは,周りの色に合わせた保護色ではありえません。

「ふしぎだなあ」と思っているとき,ふと思い出したのが一冊の本の内容でした。本の名は『蝶・サナギの謎』(平賀壯太著)。急いで読み直しました。帯にはこうあります。「驚いたことに,アゲハチョウとアオスジアゲハの幼虫は,『周りの色』を見てサナギの色を決めていたのではなかったのです!!」と。内容は,蛹の色が何によって決まるか,ズバリ実験でつき止めた研究結果なのです。本を読むとわかりますが,細部に至る追求姿勢に驚きを禁じえません。

書かれた内容を要約すると次のようになります。

「食草の葉,若い小枝は緑で,表面がツルツル。木の幹や枯れ枝は褐色で,ザラザラ。サナギになる場所の表面から受ける触覚刺激で,サナギの色が決まる。いちばんの要因は,粗粒面か,平滑面か,によっている」

サナギが何を通して触角刺激を感じるかが気になります。平賀さんは,頭部にある機械感覚毛だと見ておられます。

さらに,つい最近,昆虫写真家海野和男さんの著書『身近な昆虫のふしぎ』で次の一文に出合いました。

「サナギには緑色と茶色のタイプがある。色は,幼虫がサナギになる場所で変わる。緑色になるのは,周りに葉のにおいがあること,サナギになる場所がつるつるしていることなどが影響する。においがなく,ざらざらした場所では茶色のサナギになることが多い」

わたしが見た二例では,色が緑と褐色,どちらも平滑面。したがって,線を引いたような結果にはなっていません。基本には沿っていないように見えます。しかし,今回,“ふしぎ”をくすぐられる事実と出合ったのです。これをきっかけに今後,蛹の色のでき方を気にしておこうと思います。