屯田物語

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恐怖をささやくもの

2020年02月24日 | 春を呼ぶ朝


旭川市立北都中学校の昭和32年の卒業アルバムから「購買部のみなさん」
堀先生がお若いですね。

大村正次著「春を呼ぶ朝」― ―

 恐怖をささやくもの

日が暮れたので
御用にゆくのが恐ろしい
暗闇には天狗がゐる
むじながゐる
猫の目が光つてゐる。

そんなものはゐない
そんなものは恐ろしくない
その方がほんとうだ
けれどもやつぱり恐ろしい
そつとのぞくと
あの隅に何かゐるやうな
おゝぞつとする。

人間ひとびとの心のなかに いつか巣喰うた夜の恐怖。
誰もとることの出来ぬ夜の恐怖。
それはいつどこからきた――
あの
猫の毛を引毟つて喜んでゐる稚子おさなご
恐怖おそれを微塵も知らぬ稚子に
暗闇の恐怖を 囁いていくものは誰だ。