屯田物語

フォレスターとα6000が
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八文字柿

2020年02月13日 | 春を呼ぶ朝

旭川北都中学校アルバム(昭和32年)から・・
ダンス部のみなさん。顧問は斎藤先生。

大村正次著「春を呼ぶ朝」―神に召される前―

 八文字柿

その日はなぜかふさ子がいとしくなつて
素的に大きな八文字柿と紅い林檎を
籠に一杯買つて行つた。
ふさ子は母に身体を起してもらひ、
うれしさうにその柿と林檎を眺め、
一つの林檎の切端を
うまさうに舌打ちして喰べ、
柿はなほつてから喰べるのだと
三つ枕元に置いてゐた。
俺はその時はじめて
病みほけたふさ子をまじゝゝと見た。
痩せた蒼白い溺死者のやうな腫れた顔、
あの黒い程生々してゐた血色を
腹膜炎といふやつが すつかり奪ひ去つて
この世の人とも思へない顔が
なつかしく俺を見返へしてゐた。

ふさ子とは それつきりになつてしまつた。