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続橋守展(6月11日まで)

2006年06月11日 07時25分35秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 写真の世界では廃墟や産業遺産がちょっとしたブームになっていますが、絵画では取り上げている人はそれほど多くないと思います。
 続橋(つづきばし)さんは、かつて炭鉱で栄えた歌志内出身。日本の近代化を支えてきた産業遺産に目が行くのは自然なことなのでしょう。
 会場には200号の絵が「ふたつの建物」「残響」「残影」「遺されたもの」と4点もあり、迫力があります。近くの80号の絵が小さく見えてくるほどです。
 いずれも、天井が破れかけた工場らしき建物の内部を克明に描いています。よく見ると、ただ写実的なだけではなく、画面全体に、茶や黒の雨が降っているような絵の具の飛沫が散っています。
 ただ、作者は、単にジャーナリスティックな心情だけではなく、直線がつくる画面のおもしろさみたいなものにも惹かれているのだと思います。「二本の柱」などは、見方を変えれば幾何学的抽象のようでもあります。
 小品には、本州の寺社や、富良野や小樽などの風景を描いたものもありました。

6月6日-11日
さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)


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4 コメント

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解説風に… (川上)
2006-06-11 22:59:13
続橋守さんは、43年歌志内生まれ。中学卒業後就職し、上京して働きながら絵を描きました。19歳で大検に合格し倉石隆(主体会員・故人)氏に師事。のち東京学芸大学入学。苦学して3年生の時第1回主体展に「炭坑」が入選、という経歴をもちます。以後4回展まで連続出品。のち玉川学園教員。4年後に退職しフランスに滞在。4年後に第9回主体展でカムバックし現在に至ります。

主な主題は工場、採石場、古い建物、漁港、倉庫など。現在は足尾銅山跡にこだわり、最近は工場内側の機械、労働の跡などの朽ちた佇まいに光を当て、生きた証を写しとることを主要な仕事にしています。

また、マザー・テレサの考えに共鳴し山谷での奉仕活動に力を入れていた時期もあるとのことです。



画面の構成は、さび色の柱、梁、屋根などが無表情と思えるような直線で主に1点透視法で描かれています。しかし、よく見ると部分的に意図的に縦の太い造形物(ボンベであったり太い柱であったり篩い機のような骨組みなど)を配置していて、視点を消失点に集中させることなく画面全体のバランスをうまく取っているようです。

乱雑と思えるような工場内部の機材などの配置は意図的な移動法を用いて決して猥雑ではありません。むしろ統一的に床の部分は暗く、空や割れ窓からの光を明るくすると言う明暗の配置によって安定感や静寂感を感じさせます。

朽ち果てた工場の内部ですが、人の存在感を放置された機械やタンクなどによって感じさせるというのもこの作家の意図した事のように思えます。



マチエールにテクスチャサンド(マーブルなど)を用い、ナイフで平滑に塗り上げた後、表面はローラーの技法を繰り返し使っています。印象的な空の白はローラーで幾たびも重ねて強調して描いたもののようです。特徴的な鋭い線描は、腕枕などを拠り所にして描いたようですが生き生きとしており、静寂の風景の中に工場の騒音や人々の喧噪がよみがえってくるような感覚を覚える一因となっているようです。
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川上さんへ (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-06-11 23:03:32
本文をはるかに上回る詳細なコメントをどうもありがとうございました。

とくに透視図法の解説は参考になりました。たしかにところどころで視線をさえぎってやらないと、無味な構図になってしまったでしょうね。
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川上さんへの質問 (T.nakamura)
2006-06-12 23:21:07
勘違いしていたなら、ごめんなさい。



(川上@道都書房) さんと(川上)さんはまったくの別人なのですか。
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T.nakamura様 (川上)
2006-06-14 00:55:16
同じ人間です。

長いので「川上」にしました。宣言無く失礼しました。



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