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北海道美術ネット別館

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■前田育子展(6月7日まで)

2007年06月06日 00時39分25秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 前田さんは1968年、胆振管内白老町に生まれ、同町に工房を構える陶芸家。
 昨年、江別市セラミックアートセンターでひらかれた型破りなグループ展「陶といきいきアミューズメント」などで、廃陶をもちいた作品を出品しました。もちろん、一般のうつわも作りますし、今回はひかえの間に、そうしたうつわ類はならべてあります。
 ただ、道内の大半の陶芸家が日常雑器や茶器などからなかなか創作の範囲を広げない現状のなかにあって、前衛的な表現にとりくむ姿勢は、個人的には評価したいと思います。

 というか、会場入り口から入って、最初の作品(冒頭画像)を見て、いささかショックを受けました。

 これが、純粋なオブジェだったら、そんなにびっくりしなかったのだろうと思います。

 そこにある花瓶のようなかたちは、しかしあちこちで穴があき、陶片がさしこまれ、しかも内部には小さなはしごのようなものさえ据えつけられているのです。
 ばらばらの陶片は、不二家の菓子ノースキャロライナに似た渦巻き模様をしています。
 うつわが、中にものを満たす目的を持ったものであるとするならば、これは「うつわではない」といえるでしょう。
 でも、形状は、かろうじてうつわであろうとしているのです。

 どうして前田さんがこのような表現に取り組むことになったかについては、会場のギャラリー門馬のサイトに書いてあったので、全文を引用します。

私が子供の頃に使用していたキャラクターもののマグカップの取っ手が壊れた状態で出てきました。
しかし私はそれを捨てる事が出来ませんでした。
その思い出のあるカップをガラスの中に封じ込めば記憶、思い出として残すことが出来ると始めた廃陶。
今回もパート・ド・ヴェールの技法を用いて私の中の記憶や思いのある物を形とした作品を展示したいと考えています。

 その技法をもちいて作られた初期の作品は、会場の奥のほうに、床の上に配置されていました。

           

 この画像にうつっているのは、自宅の前の石にガラスをかぶせて、窯で焼いたものです。
 原料はガラス瓶などを用いています。


           

 虚空に階段がのびています。


           

 こちらは、釉薬に川砂をまぜて焼成した作品。元のかたちは、石膏で形をとって作ったそうです。
 表面は、まるでサンドペーパーのようです。
 陶芸が、土からできていることを、あらためて証ししているような、そんな表情を持っています。
 サイロ、家、りんごなどが、ふしぎなたたずまいをもって、そこに存在しています。
 「もろさを表現したかった」
と前田さん。

 土による表現の可能性に挑んでいる姿に、これからも注目していきたいと思います。 
 
 
 前田さんは、ことし8月23-28日に、札幌・円山の青玄洞で、清水しおりさんと2人展をひらきます。


07年6月1日(金)-7日(木)11:00-19:00
ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ケ丘2)

陶といきいきコミュニケーション「アミューズメント」展公式ブログ(06年)

江別市セラミックアートセンターの企画展「素 そのやわらかなもの」 (2003年、画像なし)


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