GRASSの日々折々

馬好きフォトグラファーが綴る日々の1ショット。

さくら

2007年03月01日 | 馬徒然
行こうとしているチビを引き止めてしまったのだから、ずっと側にいようと思って、徹夜を決めた。
部屋の寝床に横たわるチビは、体力気力ともにないのに、要求は一人前である。手を伸ばして何度もダンボールをガジゴジこする(どこにそんな力が残っているのよ???)。
元気だった頃、チビは私に注目してほしいときはひたすら音をたてたものだ。ベランダの戸に体でぶつかって呼び出す、部屋の中に入って絨毯でガガガと爪とぎをする。そのたびに私はチビの相手をせざるを得なくなる。
寝たきりになってもそれは変わらない。「寝返り」の手助けをするが、チビの要求はそうではないらしく、やっと「暑い!」ということがわかった。床暖房を切ると大人しなくなったが、30分ほどすると「クシュンクシュン」とくしゃみ。そのたびに鼻づまりで苦しそうなので、ふきとってやる。ときどき声にならないのに「ニャア」と鳴く。低温にして再度床暖房を入れると、心地よかったのか静かになった。私も、ウトウトした。
まだ声を出すのだから、もしかしたらまた元気になるかも・・・なんて思ったりした。今までだって何度、諦めかけたかわからないもの。
はっと気がつくと朝6時半、聞き取れないほどの寝息。今日の仕事はキャンセルしようと思いながら30分後、「チビ」と声をかけて首筋をなでてみた。暖かいけれどなんだか変・・・。

7年前、チビはマンションの庭で生まれた。兄弟もみんなこの庭で生まれ育ち、そしていつしかいなくなった。チビは母乳の摂取量が他の兄弟に比べて悪く、体質的に問題を抱えていて、手を差し伸べずにいられなかった。とにかく世話のやける子だった。体力的な発育が遅く、口元に病気を持ち、後年は腎臓も病んでいた。
最後の力を振り絞って、あの晩チビがどこに行きたかったのかわからない。母に手伝ってもらい、庭の桜の木の近くに埋葬した。
今頃、家族に会って喜んでいるような気がするなあ。

チビの写真を探したが、兄弟と幸せそうに過ごていた時代の姿ばかりが残っている。この姿を見ているから、どうしてもチビを家猫にすることができなかった。
我が家のベランダにチビの姿がなくても、この庭のどこかでチビは猫仲間と一緒に楽しそうに暮しているんだろうなと、思うのである。




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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
安らかに (umakko)
2007-03-02 12:41:57
逝ってしまったのですね。別れは悲しいです。
でも、きっと安らかな魂となって、行ったことでしょう。
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どこかで・・ (grass)
2007-03-02 18:19:51
散歩していて、ひょっこり帰ってくるんじゃないかと・・・。まだ気配を感じます。
フウもチビも、歌のように風になったのかもしれないですね。
ありがとうございました。
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私が助けにしている祈りのコトバ (colon)
2007-03-02 22:10:22

私の心のあたたかな命が
あなたの魂のもとへと流れます

霊なる世界の中で
 あなたの寒さをあたためるために
 あなたの暑さをやわらげるために

私の想いがあなたの想いの中に
そしてあなたの想いが
私の想いの中に生きますように

--
かわいいチビちゃん達の写真かわいいですね。
grassさんの心の中でいつまでも一緒に生きつづけますように。

今日、森林公園にいらしたんですね!桜が咲いたらぜひまたいらして下さい☆
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想い (grass)
2007-03-02 23:13:58
「想いが生きる」・・・そうですね。人の気持ちも、脈々と命を宿しているのですね。
ありがとうございました。
今日、モクレンがふくらんでいました。マロンちゃんは、檻の中に囲われているみたいで、なんだか気の毒でした。

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やすらかに。 (gomame)
2007-03-03 02:52:34
いつかまた、きっとチビちゃんに会える日が来ると思います。
姿や名前は変わってしまっているかもわからないけれど・・・。


看病、本当にお疲れ様でした。
辛かった・・・と思います。
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生まれ変わり (grass)
2007-03-03 09:49:50
チビは、以前我が家で22年生きたピッチの子孫だったと思います。ピッチも縁の下から拾い上げた子でした。
皆さんに、いろいろご心配いただき、ありがとうございました。
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