ヤングキングアワーズ 2017年1月号より
今月の『蒼き鋼のアルペジオ』感想はこちら
今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
ヴァグラムの戦いも終わり……
生き残った者たち、そうでない者たち。
ランヌのことがあったからか、より敏感になっている空気が感じられますね。
べシェールの馬が転倒するも、べシェール自身が無事なことを確認した
ナポレオンが、ホッと安堵の息をもらすなどしています。
そして、マッセナの所でも戦場を去る者が……
ラサールは、イタリア遠征にも参加した人物で、前回はマッセナの窮地を
救ったりもしていましたが、ヴァグラムにて戦死。
余談ですが、彼はこの戦いで命を落とすことを覚悟していたらしい
エピソード(子供のことを託す遺書を残していた)もあるのですよね。
そんな彼の遺体を横目に、過去を回想しながら、感傷にひたっているようにも
みえるマッセナさんが、珍しい雰囲気でした。
マッセナは、ロディの橋でナポレオンに賭けたことから「もうちっと付きあう」
なんて言っていたのが印象的で、ナポレオンを嫌いつつも共に歩む姿勢が、
ラサールの死という重みゆえに、じんわりと感じられた気がします。
ドケチなマッセナ元帥。
その後、ナポレオンにねぎらわれるマッセナさんでしたが、
ヴァグラムの時に臨時で雇った御者についてナポレオンに聞かれるや、
「200フランほどくれてやります」と、“彼にしては”豪気なお言葉。
まあ、一時金のつもりだったのに、なぜか「年金」という噂になってしまい、
後に引けなくなってしまったのはお気の毒でしたが、200フランというと、
現代では10万~100万円ほどでしょうかね?(違うかも)
ナポレオンの耳に「年金」の話が入って、「広報に載せてやろう」とか
言っていたのは大笑いでした゚(*゚´∀`゚)゚
この時代、200フランの正確な価値は不勉強でよくわかりませんが、
この騒動でマッセナさんが、ドケチとして有名になったというのは可笑しかった!
オーストリアとの和平交渉は、思うようにはかどらず……
和平条約の締結もままならない状況で、各地に問題発生。
そのことに頭を悩ますナポレオンでしたが、その際、外交担当として
タレイランに未練を残していたのが、面白い所でしたね。
オーストリアのメッテルニヒは、外交手腕も卓越した人物で、
タレイランへの未練を感じさせた直後に、彼がフランツ2世に
「面従腹背」を進言していたのが、食わせ者っぽくてよかった。
本作では、ナポレオン体制の崩壊を、タレイランとも共謀している様子な彼。
その「崩壊」まで3年と見繕っているあたり、慧眼と言わざるを得ません。
ナポレオン暗殺未遂。
ドイツの学生フリードリヒ・シュタップスによるナポレオン暗殺未遂事件。
ナイフを持ち出し、ナポレオンに近づこうとした所をラップ将軍に阻まれ、
逮捕されています。
この話、ベルティエも絡んでいるなんて話を記憶しているのですが、
詳しいことは忘れてしまいました(^^;
それはともかく、彼の尋問に、ナポレオン自らがあたるというのは愉快。
シュタップスくんも面食らっていますが、同時に、ナポレオンに対して、
自分の思う所を語っていたのは、なかなか立派。
ナポレオンを殺せば、欧州に平和が戻ってくる。
そうした認識は、一般的だったのでしょうかね。
そんな話は、ナポレオンに一笑に付されていますけど、暗殺について語る
ナポレオンの言葉は、確かに納得のいくものでした。
暗殺される側は業績を残しているが、する側は暗殺だけだと……
さらに、シュタップスくんに故郷へ帰るよう勧め、あるメモを渡して
罪を許すことにしていたのは、太っ腹すぎて脱帽でしたね。
そのメモを軍事法廷の責任者に渡せば、故郷に帰ることができる。
その後、恋人の元へと帰ってゆく彼の姿が描かれつつ、しかし同時に、
衝撃的な場面が重なってゆくのには、驚かされましたよ。
メモの内容が、ナポレオンの寛容の表れであったことを思うと、
シュタップスくんの選んだ道とその意思が、より一層重くのしかかってきます。
いつ殺されてもおかしくない。
シュタップスくんのような、ごく普通の青年に命を狙われたことで、
自分がいつ死ぬかもしれないと考えたナポレオン。
そこで「世継ぎを作ろう」という発想に至っていたのはともかく、
「若い姫君と」なんて言い出していたのは、ちょっと面白かった(^^;
ただ、そのためには離婚という課題が浮上してくるわけで、
戦争や条約締結に比べれば何てことないと、強気なナポレオンでしたが……
はたして、家庭内戦争ともいえる離婚問題は、無事にすむのかどうか?
ジョゼフィーヌさんはどう出るか? ウジェーヌくんの反応は?
現在の情勢も含めた諸々が気になりつつ、今後も楽しみです!