五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 今月のナポレオン

2015年06月04日 | ◆[不定期] ヤングキング・アワーズ

ヤングキングアワーズ 2015年7月号

 今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
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以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 
 
 
 
 

●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)

 

 スペイン戦線、まっしぐら・・・

 スペインの混乱に対して、デュポン将軍が派遣されることに。
 元帥ではないものの、これまで多くの戦いで活躍してきた人物ですね。
 フリートラントの戦いでは、ネイの危機を救ったとも言われています。

 ネイなどは、誰もが「元帥杖を手に入れる」と噂していることを、
 デュポンに告げていますが、2人とも、スペインを甘く見ている様子。

 今回は、その慢心に、大きな一撃がくらわせられることになります。
 それは当然、ナポレオン自身にさえも・・・・・・

 

 

 

 今回の主役は、画家のゴヤ!

 フランシスコ・デ・ゴヤは、スペインの有名な画家であり、
 ゴドイが所蔵していた「裸のマハ」をはじめ、「我が子を食らうサトゥルヌス」、
 「マドリード 1808年5月3日」など、広く知られた作品の作者でもありますね。

 そのゴヤが、スペインでの大陸軍の所業を目の当たりにして、
 彼が感じたものを絵画へぶつけ、「マドリード 1808年5月3日」を描いた場面、
 圧倒的でしたね・・・ 裸婦画の陰毛など、消し飛ぶくらいに(ぇ

 しかし彼は、人間そのものを見据えていて、国がどこであるとかは無関係に、
 人間の蛮行への憤りと悲しみを抱えていたように思えたのは、好感触でした。

 スペインの神父が、子供達を教育をしている場面。
 スペイン人を善人と定義し、敵であるナポレオンやミュラを、悪しき異端と認定。
 そのうえで、異端であるから殺しても天国へ行けるなどと扇動しているのを
 目撃したゴヤが、「嘆かわしい」と評していたのは、彼の理知を感じさせます。

 そして、ゴヤ自身の「絵」に関するスタンスも、なかなか興味深かった。
 絵そのものの美しさではなく、絵を見た人間の心に生まれるものにこそ、
 価値があるというのは、実際の彼の考え方なのかはわかりませんけども、
 もしかすると長谷川先生も持っている姿勢なのかもしれませんね。

 

 

 

 ボルドーで報告を受けるナポレオン。

 視察中、「万事うまく行ってる」と落ち着いた様子のナポレオンでしたが、
 そこへコレンクールが、何かを知らせにやって来ます。

 その報告は、「悪い知らせ」。
 なんと、デュポン率いる一軍が、降伏したというもの。
 さすがのナポレオンも、驚愕の色を隠せないようですが・・・

 これが大陸軍の初降伏になるのですかね。
 あれだけ舐めきっていたスペインの軍に、初の降伏を強いられたことは、
 想像もしていなかったでしょうし、それだけに衝撃も計り知れない。

 逆に、スペインの人々は意気が上がっている様子ですし、
 各国も大陸軍の敗北を知り、どう動くかわからない状況へ・・・・・・
 まさに泥沼へ足を突っ込んでしまったナポレオン。
 そんなことを感じさせる不吉が、じわじわと迫って来ていますね。

 そして、たしかボルドーは、ゴヤ最期の地でもあったような・・・
 記憶違いだったら申し訳ないのですが、そのあたりにも運命というか、
 何かしらの因縁を感じてしまいました。

 

 

 

 ゴヤの筆。

 スペインの勝利に喜ぶかと思いきや、彼の視線は異なる方向へ。
 敗れた大陸軍の将軍と、その家族がたどった悲惨な末路と、
 それを与えたスペインの村人たちへの複雑な感情が、彼を突き動かします

 どっちの味方か?
 などと言われて、初めて感情を爆発させた彼に、思わず共鳴したくなりましたよ。
 無理解・無自覚への絶望感をかみしめたくなるような、そんな気分でした。

 フランスもスペインも関係なく、ただ、人間そのものへ向けられた彼の視線。
 そこにあるものを観察し絵に落とし込む、画家という立場であるからこその視点。
 そうしたものに、敬意がわきあがりました。

 画家を描くエピソードでは、何かしら作者である長谷川先生にも通じる
 哲学なり思想なりが感じられる気がするのですが、どうでしょうかね。

 それだけに凄味を感じつつ、なおかつ引き込まれてしまった今回の話。
 最後に、近年までゴヤの作品として知られた「巨人」が、彼の弟子の作品だった
 というエピソードでシメとなっていましたが、恥ずかしながら存じませんでした(^^;

 戦争の惨禍を描く画家。
 ひたすら冷静に観察し、激情を腹の中に押しとどめ、絵として昇華させる・・・
 自身の技術が他の有名画家に劣ることを自覚しながらも、独自の強みを持ち、
 挑む姿には、感動すら覚えてしまいました。

 いよいよスペイン戦線も、次のステージへと移りそうな気配。
 それは、惨禍が拡大することを意味しており、ゆえに今回のエピソードは、
 重みをもってくるのではないでしょうか? なんて感じつつ、今後も楽しみです!
 

◆ ヤングキングアワーズ 感想
 


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