五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 『リューシカ・リューシカ』1巻

2010年08月27日 | ◆マンガ 感想

(安倍吉俊 先生)

 「ガンガンONLINE」にて連載中の作品です。

 現在、【その11】「なつのおわりをつげるもの」が公開中(9月22日まで)ですが、

 この話がとても素晴らしかった!

 笑いながら泣ける作品というのは、私にとって至宝です。(正確には泣きそうになった感覚)

 

 

【あらすじ】

 物語は、リューシカという少女の「日常」を描いたもの。

 両親が不在がちな少女リューシカの日々は、空想で満ちることしばしば。

 姉・有季子(あーねーちゃん)や兄・賢(アニー)は、リューシカの言動に戸惑うことしばしば。

 

 まだ幼いリューシカの見る世界は未知であふれかえっていて、

 その数々の未知に対するリューシカの思索は奇妙玄妙、ファンタジー、ときに哲学。

 ゆえに姉・兄とのやりとりがちぐはぐで面白かったり、その思考が趣深かったり・・・

 

 リューシカが“世界”に向き合ったときの視点・思考・感情・行動に、

 どこかなつかしいものを感じたりすることもあったりする、そんな少女日常コメディです。

 

 

【感想】

 基本、「子供」の言動・思考を眺めながら楽しむタイプの作品なので、

 やはりそうした部分が面白味になっています。

 

 大人から見れば何でもないことであっても、子供にとっては一大事。

 そんな出来事にリューシカが向き合って、喜んだり怒ったり哀しんだり楽しんだりします。

 だるまが転げ回ればそれにおびえ、暴風雨の後の庭を見れば「誰かが荒らした」と考え、

 そんな風に1つ1つの出来事に対するリアクションが面白い。

 

 しかも、リューシカは空想少女。

 だるまが怒っていると感じて、だるまのご機嫌をとろうとしたり(第1話で読めます)、

 庭を荒らした「誰か」を見つけて、その「誰か」をしかったりと、その様子は面白1人芝居。

 それが笑えるやら微笑ましいやら、とにかく楽しいのです。

 

 

 また、もう1つの特徴として、リューシカの趣深い思索があります。

 これが大人の視点で見ても何かを感じられたり、考え込んでしまったり・・・

 

 「目玉は2つあるのに、見えるものが1つなのはおかしい」というところから、

 リューシカは自分の見ている世界が、ホンモノかニセモノか悩んでしまったりします。

 この話でリューシカは自己との対話を試み、それを経て

 「・・・もうちょっとでだいじなことがわかりそうなきがした・・・」なんて語るんですよね。

 

 ここでの対話の内容も、「世界のありよう」を子供がどうとらえているか、

 みたいなことが感じられて、なんというか“深い”。

 このように、リューシカなりに手探りしながら「世界」に向き合っている雰囲気に、

 胸迫るものを感じたりもします。

 

 

 基本は、リューシカの行動や考え方が笑える楽しさにあふれていて、

 読んでいて心地よく、時に感心させられたり、趣深い感動を覚えたりもする

 そんな素晴らしい作品です!

 

 ところで、リューシカの名前って栢橋龍鹿(かやはしきみか)なんですけども、

 なんで「リューシカ」と呼ばれたがっているんでしょうね・・・なんて気にしたり。

 姉「有季子」や兄「賢」とくらべても、「龍鹿」なんて変わった名前なのも妙な感じ。

 このあたり、なにか事情があるような雰囲気でもありますね。

 

 ホントは1ヶ月以上前に感想書きたかったんですけども、遅れに遅れてこんな時期。

 なのに大したこと書けていませんが、とにかく面白い! 私は大好きです!!

 

 

 

【余談 : 『よつばと!』との比較】

 小さな女の子の「日常」ということで、『よつばと!』との共通要素も多い本作品。

 たしかに似通った印象を受けたりもしますが、そこはモチーフとしての共通点がある以上、

 似たような雰囲気になるのはやむなしと考えます。 ちなみに私は両作品とも大好きです。

 

 似ているといえば確かに似ている作品ではありますが、

 私の感じたところでいえば、「リューシカ」=曇天、「よつばと」=晴天っぽいイメージ。

 そうしたイメージの違いをもたらしているものが何なのかと考えると、

 それは「不安」という要素の比重にあるのではないか、と考えます。

 

 これは巻末でも語られていることなのですが、「リューシカ」には「不安」という要素が

 持ち込まれていて、そこを起点として物語が生まれており、それがカラッと晴れた感覚とは

 別のなにかを感じさせているような気がします。

 

 といっても、そこは「子供の感じる不安」であって、「大人から見れば他愛ないもの」だったり

 するので、読んでいて重苦しいということはほとんどないです。

 むしろ微笑ましかったり、「なんかわかる」と思ったり、「くだらねー」と笑ったりする感覚で、

 リューシカの「不安」との対峙を眺める楽しさがあります。

 

 

 さらに『よつばと!』には、「と」と付いていることからわかるように、

 少女よつば「と」何か・誰かとのふれあいから世界を眺めるような視点、

 主に現実との関わりを中心としますが、

 『リューシカ・リューシカ』では、少女リューシカの世界は

 自己との対話(空想)を中心にして成り立っているのです。

 名前が繰り返されたタイトルは、自己との対話で閉じている状態を示しているのかも?

 (単なる決まり文句であるとか、語呂が良いというだけかもしれませんけども・・・)

 

 『よつばと!』は、主人公よつばの「行動」を眺める視点が多いですけど、

 『リューシカ・リューシカ』は、主人公リューシカの「内面」を眺めることが多い。

 そのあたりが相違点というか、両作品それぞれの個性をみきわめるのに必要なポイント

 と言えそうな気もします。