散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

横浜・川崎に跨がる首都圏ベッドタウンベルトの様相~統計・昼夜人口比率のからくり~

2012年09月01日 | 地方自治
昼夜人口比率は首都圏を考えるうえで、重要な指標の一つ。これまでは、2005年度版の国勢調査結果までであったが、ようやく最新2010年版の結果が横浜市統計局から公表された。

横浜市の昼夜人口比率が回復、林市長「企業誘致などの成果」』カナロコ 8/30

上記の新聞記事から横浜市が市長記者会見で発表したのを知り、政策局統計情報課の
横浜市統計ポータルサイト』に掲載されていることを確かめた。

同局は情報を積極的に公開しており、メルマガも配布され、筆者も親しんでいる。地味な仕事であるが、政治・行政の世界ではもっと活用されて良いのではとの感覚を持っている。もちろん、私たち住民も世の中の出来事を理解するうえで、大切なことであろう。

今回の昼夜人口比率を知るには、上記のサイト中で記者会見資料
平成22年国勢調査 従業地・通学地による人口・産業等集計結果 横浜市の概要」が簡便。

横浜市 人口(万人) 昼夜人口比率 夜人口―昼人口 就業者数 通学者数 
2005年  354.6    90.4     32.1    173.6万  19.3万
2010年  368.8    91.5     31.4    170.3万  19.1万
川崎市 人口(万人) 昼夜人口比率 夜人口―昼人口
2005年  132.6    87.1     17.5
2010年  142.5    89.5     15.0

結局、横浜、川崎両市の昼夜人口比率は前回比較で増加している。横浜市の人口増が4%、川崎市が7.5%であり人口流入が続く中、夜人口―昼人口の差は小さくなっているのが目立つ。横浜市の傾向について林市長は「積極的な企業誘致の成果。みなとみらい21(MM21)地区の開発や企業立地促進条例の制定などの成果が表れた。」と述べている。しかし、本当にそうだろうか?

ここで考えるのは65歳以上の老齢年齢者の増加である。当然、団塊世代の定年退職時期とも重なる。更に若者の就職難である。生活保護受給者も増えている。従って、その人たちが何もしないで横浜市にいれば、昼人口は増えるはずである。

改めて、資料を漁ってみると、65歳以上の人口は以下に示すように急激に増加している。就業者そのものが減少していることを確かだ。
 平成12年…13.9% 17年…16.9% 22年…20.1%

更に、「平成22年国勢調査 産業等集計結果 横浜市の概要」では、労働力人口が戦後初の減少、17年「183万人」に対して22年「180万人」と「3万人減」であり、完全失業者は「9万9千人」、戦後最多、と報告している。そこで上記の表に戻ると、横浜市の就業者数は「173.6万人」から「170.3万人」へ、通学者数は「19.3万人」から「19.1万人」へそれぞれ低下、当然、市内外の就業者数はそれぞれ約1.8万人、約1.2万人減少している。人口増加にも拘わらずである。見掛けの回復である。

従って、横浜市の昼夜人口比率が回復したのは「老齢化・若者の就職難・失業者の増大」によるものと推定される。「企業誘致などの成果」は含まれるが、数値的には陰に隠れている。林市長は行政当局の口当り良い説明に納得したのか、数字の意味を判っているのか、はなはだ心許ない。

更に続けて、市長は「100に近づけたい」と意欲を見せたが、東京への流出過剰は約38万人、現状を肯定し、リタイアが増えていけば、良いだけという情けないオチがつく。しかし、首都圏全体のダイナミズムからは、横浜市の昼夜人口比率が「100」に近づくこと自体に意味はない。それよりも危機意識の欠如に唖然とするだけだ。川崎市も同じ状況であろう。阿部市長の認識は如何?

首都圏の経済・社会活動は市町村都道府県などの行政の範疇を超えていることは、企業人としての林氏は人一倍判っているはずだ。官僚機構の御輿に載っているだけでなく、そろそろ政治家としての意思を表明する必要がある。「大都市制度」に対する見解も、中田前市長時代から変わっていない。しかし、前市長は「大阪市解体・区独立」の旗印の下、橋下市長の特別顧問として活動している。

これが政治の世界の皮肉な巡り合わせとしても、問題は横浜市役所の権限ではなく、住民自治とそれに基づく生活こそが市政の基盤にあるはずだ。

        
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