朝顔

日々の見聞からトンガったことを探して、できるだけ丸く書いてみたいと思います。

「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド著)

2014-07-27 | もろもろの事
昨日、京都の最高気温は38.3度、お隣の滋賀県東近江ではこの日の全国最高38.8度を記録しました。ひと月前のバリ島のほうが涼しかった。

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少し前から、”人類史に文字(情報)が果たした役割”を調べるために文献を探して読んでいます。

そこでこの本にぶつかりました。



「1532年南米を侵略したスペインの侵略者ピサロとその168人の兵は、数百万の人口があったインカ帝国の8万人の兵に守られたアタワルパ皇帝を捕獲することができた。その理由は、インカが文字をもっていなかったから」

・・この遭遇の20年以上前に、すでにスペイン軍の残虐な侵略行為は中南米で行われていたにも関わらず、その情報が文字通信などでインカ帝国に伝わらず、ピサロ軍を善良なる使節と信じ込んでいました。

一方のピサロはコロンブスの1492年アメリカ到着以降、その遠征成果についての情報(文字による報告)によりスペイン国王の命令で遠征してきたのです。新天地の発見により、欧州諸国の北米、中南米への進出はすざましいブームとなっていったのです。

ダイヤモンド氏は「なぜ欧州諸国がアメリカ大陸、アフリカ、インド、アジア、オーストラリアを征服することができたのか。なぜ、ニューギニア民族がヨーロッパを征服できなかったのか」を、意外な視点から解き明かしてくれます。

武力の圧倒的な差、例えば軍用馬、鉄砲、弾薬といった我々の常識的な推察は、その一つの理由ではあるのですが、もっと大きな原因は「病原菌」だと言い切っています。

例えば、インカ帝国が滅びたのは、戦闘での死者よりもスペイン人が持ち込んだ天然痘の流行によるものが桁違いに多いのです。

北米のアメリカ原住民が人口を急激に減らしたのはインフルエンザでした。

中世までの欧州人は、家畜、豚や鶏などを農耕、牧畜に使用していたため、これら致命的な病原菌の攻撃を家畜経由で受けながらも、生き延びた結果、免疫を身につけていたのです。

ヒトの現生人種はアフリカで生まれ、1万3000年をかけて世界中に拡散しました。当初は狩猟採取で生計を立てていたので、季節の変化や気候変動、採りつくしなどで常に居住地を移動していました。

気象条件が農耕に適していたメソポタミアに到達したホモ・サピエンスは、その地で農耕に適した穀類(小麦など)と家畜の野生種を発見しました。

メソポタミアでは、その食料生産の余力を得ることができたので、グループのリーダー、首長が生まれ、政治、祭り事、軍事、治安と食料備蓄の専門職が発生しました。それを支援する神官と行政官が生まれ、記録機能として文字が発明され、政治や行政、取引などの記録がなされるようになり文化が発展していきます。(シュメール文字、楔形文字:なんと現代では解読されている)

文字は、同様に独立して農耕文化が始まった中国でも発明されました。それ以外にも、現在のメキシコに存在したマヤ王国でも作られたのですが(マヤ文字)、これは周辺地域に拡散せず消滅しています。

13,000年にわたる農耕植物や家畜の伝搬に関して、ダイアモンド氏は興味深い考察を示しています。穀類や家畜、文字の伝搬は、5大陸のうち、東西方向には広がりやすかったが、南北方向には広がらなかった。オセアニア大陸はかくして、農耕技術が広がり、食料的余剰力ができ政治機構が発達し、武器開発も進みました。

アフリカ大陸では、東西に広がるサハラ砂漠に遮られてメソポタミア文明は南下できなかった。北アメリカ大陸とオーストラリアでは、狩猟民により大型の野生獣が絶滅したため、家畜化はできなかった。

さて、冒頭の質問「なぜ、ニューギニア人がヨーロッパを制服できなかったのか?」についての、解説は「人類史における時間差の問題であり、たまたまメソポタミアに距離的に近く、同様な地中海気候のヨーロッパがいち早く、食料余剰力と政治機構を発達させ(その過程で文字が重要な役割を果たしている)、軍事力を進歩させたため。ニューギニアはその環境になかった。人種的に劣位だからではない(1万3千年は現生人類民族間の知能遺伝子の進化、差異化には短すぎる)。」としています。

類似の質問ですが、「チンギスカン(モンゴル民族)はヨーロッパに向かって大遠征をおこなったが、ハンガリーあたりで停止したのは、なぜか?」

「近世において世界の覇権を握ったのは欧州であり、なぜ中国ではないのか(より中央集権国家の大国)?」

このあたりのことは、原著をごらんください。

ちなみに、ダイヤモンド氏はUCLA医学部に所属する生物学者です。

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