道尾秀介「水の柩」講談社文庫 2011年刊
久しぶりの道尾作品である。ストーリー展開や心理描写には無理がなくかなりの力量である。何気ないような事象を捉えて展開してゆく手法は、手慣れたものである。
今回はダムで水没した村の出身者一家が経営する旅館を舞台に、高校生とその同級生が主人公である。それぞれの登場人物がそれぞれの事情を抱えながら、生きてゆこうとし、そのために小さな嘘をつく。それを守ろう、守らせようとして事件が起こる。
この作者の終わり方はいつも穏やかに、ハッピーエンドとはいかないが妥当なところに落ち着く。ものすごい感動を呼ぶというたぐいの作品ではないが、静かに深い感街を覚える著作である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます