池井戸潤著「シャイロックの子供たち」文春文庫 2008年刊
半沢直樹シリーズの原型とも言うべき、銀行内部犯罪シリーズ。
著者は実際に銀行勤めをしたのであろう。かなり銀行という閉鎖世界を熟知している。
その内部競争の激しさや派閥争い、縦割り社会の不合理さなど組織悪を描いて余りがない。
半沢直樹シリーズでは、上席が出世のため、意識的に悪いことに手を染めるが、ここでは半ば無意識のうちに、或いは組織防衛、業績追求のため、言い換えれば自己保身、立身出世のために部下を動かし、不正に目をつぶる。
銀行内部の論理が見事に描かれる。顧客第一主義と言うより業績第一主義で顧客を利用し、踏みにじりる。資本主義の冷徹な論理が貫かれる。
この辺りの描写は半沢直樹シリーズでは明快に描かれるが本書ではまだそこまでには至ってない。
人気シリーズの助走作といったところか。
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