東野圭吾「夢幻花」PHP文芸文庫2013年刊
当代人気作家の作品。第26回柴田錬三郎賞受賞作品。青いバラが自然界には存在しないように、黄色の朝顔も存在しないそうである。
さすがに人気作家だけあり、この黄色の朝顔らしき花が登場するまでに、いろいろな人物が現れる。定年後を花づくりに費やす気骨ある植物研究者、アマチュアミュージシャンの息子を持つ諸葛警部、オリンピック候補までなった水泳選手。原子力発電を主たる研究分野とする大学院生などなど。
この老植物研究者が殺されたところくらいから、物語は急展開を見せ始める。一気にそれぞれの登場人物が繋がり始める。このあたりのストーリー展開は確かな力量を感じさせる。一気に謎解きに走らず、なにか解決の糸口を掴んでいながら全貌を明らかにしない、という匙加減が絶妙である。
江戸時代まで遡る黄色の朝顔の謎、それぞれの登場人物の宿命、役割がスケールを大きくしているが、それだけに多少の無理があるような気がする。が、全体的に見て傑作であることに間違いはない。
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