百田尚樹「夢を売る男」幻冬舎文庫 2015年刊
何かと世間を騒がせている百田作品であるが、これはフィクションというより、百田尚樹の小説家、出版、出版社、小説そのものに対する本音が伺えるという点で興味深い作品である。
売れなければダメ、そのことが絶対だ、という主張はわかるが、そのために何もかも踏み越えることに首を傾げる。事実を曲げてまで売らんかなとした「たかじん」の奥さんのことや、「潰さなあかん」と権力に阿た沖縄の新聞のことなど、彼の底の浅さが見えてくる。
「永遠の0」で感動した、あの語り口が、テクニックだけだったのか。なんだか舛添さんを見るようである。才能が間違った哲学のもとに使われるととんでもないことになる。オウムの例を見てもよく分かる。
百田尚樹という作家を理解する上では格好の書である。
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