中村文則「王国」河出書房新社 河出文庫 2011年刊
2005年の芥川賞作家の作品である。初めて目にした作家である。愛知県生まれの40歳の作家であるが、この小説を読む限り、なにか海外の翻訳小説を読んでいるような錯覚に陥る。
確かに文章力はさすがで自在に人物描写やストーリー展開をしてゆくが、現実世界とイメージ世界が混濁しているような印象を受ける。タッチはハードボイルドだと思うのだがなんとも不思議な感覚である。
主なストーリーは、ターゲットにした要人の弱みを人工的に作ること。それを女性の魅力を武器にして実行することが主人公の役目だが、この人物はすでに現世にさほど未練を持っていない。それで彼女を利用する側と、攻防を繰り返す側との間で立ちまわると言った設定である。
著者の別の作品がウォールストリート・ジャーナルの年刊ベスト10小説に選ばれ、各国に翻訳されているらしいがさもありなんと思う。
何を言いたいのかが少し難解なので、評価はもう一二冊読んで味わってみてからにしよう。
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