遅いことは猫でもやる

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冗長な告白

2016-09-22 15:50:27 | 


中村文則「教団X」集英社2014年刊

560ページを越える長編である。村上春樹の「1Q84」のような舞台設定ではあるが、何を訴えようとしているのか。同じ新興宗教集団とその周りを描きながら、こちらは結局教祖の独りよがり、ないしはニヒリズムに終り、振り回された周辺の信者の淡い葛藤が残る。

現世の捉え方はそれなりではあるが、それでも皮相的な捉え方であまり説得力がない。信者が心酔してゆくのはなぜか。原子さらにクオークに至る微粒子の世界に若干の説得力はあるが、フィクションとしては、まだ弱いような気がする。

著者は、世界と人間を全体から捉えながら、個々の人間の心理の奥の奥迄書こうとしたそうだが、このあたりは私にとっては冗長に流れているような気がする。アメリカの文学賞「デイビッド・グーディス賞」を日本人として初めて受賞した作家であるから、このような感想は私の読解力不足なのだろうけど、私にとっては響いてくるものが少ない小説であった。

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