貫井徳郎「崩れる」角川文庫2000年刊
この著者の作品はは初めてである。著者も短編小説は初めてだという。8篇の小説からなる夫婦もしくは婚約者に纏わる話である。
小説であるからいろいろな事件が起きるのだが、何処にでもありそうな、誰にでも起きそうな出来事が次第に危機に膨らんでゆく状況をうまく描いている。しかも、これが15年以上前の小説であることに驚く。
なぜなら、ここでは「携帯電話も」、「婚活」の片隆盛を伺わせるからである。確か未だこれらのものは15年前、今ほど盛んではなかったような気がするが、それを的確に捉えているのにはビックリする。
いずれの事件も、本人或いは関係者の思い込みか独善が原因で、信頼できる相手に早くから率直に相談していれば回避できる可能性はかなり高いと思われるが、それがたとえ夫婦であっても、自分の中だけで処理しようとするところから不幸が始まる。これらの危機を回避するには、パートナーの話を真剣に受け止め、客観的に調べるという行為が必要である。
他人事ではない。この点ではかなり考えさせられる小説であった。
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