山本兼一「黄金の太刀」刀剣商ちょうじ屋光三郎 講談社文庫2011年刊
「利休にたずねよ」で直木賞をとった著者の刀剣商シリーズ。著者は刀剣(特に日本刀)が好きらしく随所にその部所、鍛え方の薀蓄が披露される。
物語は江戸末期、流行の黄金鍛えの刀をめぐり一万両の刀剣詐欺が勃発。その犯人を追って旗本、刀剣商、刀鍛冶の3人が、江戸を西に下る。日本刀「五か伝」の地、相州、鎌倉、美濃関、京、奈良、備前長船へ。
2,3回、犯人と遭遇するが事件をいいようにはぐらかされ、結局取り逃がして江戸へ戻る。そこからの結末は興味を半減させるので触れないが、このあらすじと、語り口は一流のものである。
「利休にたずねよ」も面白かったが、この作品も面白い。ただテーマは狭いのでこのシリーズは続きにくいのではなかろうか。