青木理「日本会議の正体」平凡社新書 2016年刊
なぜ、安倍晋三は「美しい国づくり」を呼号するのか。なぜ教育基本法を改定したのか。なぜ安保法制を変えたのか。なぜ秘密保護法を制定するのか。そして共謀罪を新設しようとするのか。
この本で解き明かされる「日本会議」の実態からこれらの問いに対する回答は得られる。閣僚20名のうち13名、官房スタッフ5名中4名が日本会議のメンバーである。現実には元号法制化、国歌国旗制定法、などを成立させ着実にその成果を上げてきている。
その源は新興宗教の「生長の家」と神社本庁によるもので、教義は成長の家谷口雅春の唱える復古主義、資金、動員は神社庁が受け持っている。その主張するところは①天皇、皇室天皇制の護持とその崇敬、②現行憲法とそれに象徴される戦後体制の打破、③「愛国的」な教育の推進、④伝統的な家族観の固守、⑤「自虐的」な歴史館の否定など、民主主義、国民主権、を否定し、国家主義を持ち込むかなり復古的なものである。
敗戦を経て反省された、国家主義や天皇主権などの復興を掲げる、かなり右翼的な主張を繰り広げている。最近話題の篭池氏の学校の教育そのものである。これらの活動は当初左翼学生運動に対抗するものとしてうまれた。次第に力を蓄えてきたが、今や左翼自体が衰えて、相対的にこれらの右翼的活動が浮揚してきたものとも言える。
大戦への反省どころか、明治への復帰を目指すこの団体の台頭はまさに日本を危機に陥れんとするものであり十分警戒せねばならない。現状を鑑みる時、戦前の軍国主義の足音を聞き、考えすぎかな、と一瞬思ったが、これらの組織的な活動、運動を思い,暗然とするのは私だけであろうか。
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