佐伯泰英「新・古着屋総兵衛 15巻 故郷はなきや」新潮文庫
ご存知、古着屋総兵衛シリーズ。江戸の街を影警護する古着商の元締め、10代目大黒屋総兵衛が、越南(ベトナム)に商船を派遣し生みの母親の生存を確かめる、というお話。
自身越南の今坂一族であり、琉球の池城一族、柘植一族、鳶沢一族の4族を統べる。日本全国を商圏とし、商と武の両側面を持つ一族として、幕府の影様に従う。やや荒唐無稽ではあるがそれはそれとしてスケールは大きい。ただ今回は筋立てが単純であるだけに、総兵衛をやたら祭り上げるような描写が目立ち、少し鼻につくのは私だけであろうか。マンネリになってきた。
得意とする決闘場面は流石に手慣れたものだが、筋立てとしては必然性が薄い。暇つぶしとしては黄門様シリーズのように安定していて気が楽だが、まあそれまでであろう。