池井戸潤「アキラとあきら」徳間文庫 2017年刊
このところパソコンを変えたばかりで操作が不慣れなので、つい読書に向かってしまう。読書は進むが情報に触れる時間が少なくなってきた。退屈でしょうが、書評にお付き合いください。
「陸王」「半沢直樹」シリーズなどで人気絶頂の池井戸潤の作品。また分野も銀行員の活躍という著者の得意分野だ。生まれも育ちも違う二人の青年が就職先の銀行で出会い、運命が交差する。進む道は違うが助け合う立場になり、やがて企業再建に一緒に取り組む。
二人は過酷な局面に立たされ、打開に苦しむが智慧と努力を振り絞り、挫折しながらもなんとか打開する。絵に描いたようなハッピーエンドではなく、苦労に苦労を重ねた末の問題解決というところが、半沢直樹シリーズのような痛快さには欠けるが、現実味が加わってくる。
お互いの立場、解決策の困難さ、生い立ちや環境からくる思い入れなど、小説として道具立ては揃っている。得意分野だけにリアリティに富む語り口で、かなり興味深い小説である。