遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

心理と合戦描写

2015-02-11 00:51:29 | 


和田竜「村上海賊の娘」新潮社刊 上下 2014年本屋大賞受賞作

のぼうの城の作者和田竜の作品。娘というにはあまりにも偉丈夫、剽悍に生まれ育った村上海賊の娘の物語。木津川河口の合戦をクライマックスとする海賊同士の戦いをダイナミックに描いた作品。

正月前の休みに、息子が「これ面白いよ」とおいて行った本。私は友人から借りている本が沢山手元にあり、読む本に不自由はしていないのだが、若い人(といってももう四十だが)の関心と興味を味わうのも悪くはないと思い読んでみた。

確かに面白い。それぞれの人物描写が、いわゆる「キャラが立っている」状態である。大きな背景として戦国時代の信長と一向宗の戦いがあり、本願寺への兵糧搬入を巡っての毛利一族の内部の生き残りを賭けた駆け引き、一方南部雑賀衆、海賊眞鍋一族の思惑など双方に一筋縄ではいかない事情と思惑を抱えて時代が進む。

義と情と利、それぞれが絡みあう。戦国時代の常識として、諸将は当然利に重点を置いた行動に走るのだが、突然娘は理と情に目覚める。そしてその行動はやがてうねりとなって諸将を巻き込む。時として敵方をも同じ行動に駆り立てる。その辺りの心理描写は見事である。

同時に海戦の描写も面白い。当時の海戦はかくやと思われるように描かれている。小競り合いと大きな帰趨を決める戦いが手に取るように描かれている。のぼうの城も面白かったがこの作者は合戦描写が巧みである。

史実を踏まえながらも、物語として面白い。後年関が原の戦で見せた小早川隆景の行動も、かくありなんと思うばかりの心理描写である。上下2冊の太巻であるが後半は手に汗握る展開で厭きさせない。本屋大賞むべなるかなである。