遅いことは猫でもやる

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池波正太郎

2010-12-22 09:37:08 | 

リタイアーして本を読む時間がたっぷりできたのが嬉しい。
乱読である。浅田次郎、高杉良、真保仁、幸田真音、堺屋太一、藤沢周平など手当たり次第だ。小説が多くなるのはやむをえまい。

何故か池波正太郎「鬼平犯科帳」に凝ってしまった。会社のT君から藤沢周平の用心棒シリーズを勧められ、その流れで「剣客商売」「鬼平」ときてしまった。
年をとると時代劇が良くなる、といつか聞いたことがあるが、確かにそんな気がする。

勧善懲悪、危機一髪の場面もあるが、必ず最後は長谷川平蔵が犯人を召し捕る、或いは斬って捨て、正義が勝つ。但しそこは若い頃無頼の生活を過ごした平蔵の事ゆえ、事件処理には粋な計らいを見せる。このパターンが水戸黄門と同じように読む者に安心感を提供する。

長谷川平蔵の設定は、若い頃不遇の環境に育ち、放蕩、暴れん坊生活をして過ごすが、事の成り行きで旗本の家を継ぎ、江戸の町を取り締まる役職につくというもの。
その平蔵ゆえ、下情に通じている。盗賊の心情を読むのに長け、関係者(同心、密偵、被害者家族、加害者家族など)、にきめ細かく目配りをしている。捕物に姿を借りた人情物と言ってもよいくらいだ。ここらあたりが小説の幅を広げている所以なのだろう。東京の中堅証券会社で丁稚働きをしていた作者の経歴と少し重なって見える。

「お盗め(おつとめ)」「連絡(つなぎ)」「畜生ばたらき」「急ぎ盗め」「押
しこみ=盗みの決行」『打ち込み=現場への捕獲決行」など池波ワールドの独特の用語を私も覚えてしまったが、著者はこうして時代の雰囲気を盛り上げている。

史実にあったかどうかは判らぬが、池波はこの小説の中で、繰り返し「真の盗賊の三ヶ条」を挙げている。
いわく
1.盗まれて難儀をするもの(家)には手を出さぬこと
1.つとめ(盗め)をするときには人を殺傷せぬこと
1.女を手ごめにせぬこと
である。

真の盗賊は、これと的を決めたら、準備に1~年かけ、そこに引き込み役(内通者)を送り込み、勤めさせたり、女将さんとして入り込んだりし、家の間取り、金庫、土蔵の錠前の鋳型取り、など準備を十分整えて、家のものに気付かれないように決行したという。あまりの手際の良さに、感心した豪商はお上への届出をしなかった例もあったという。

私にとって、ちょっと悔しいのは、出てくる江戸の地名の土地勘がないので、橋や川、屋敷跡
などそれぞれの位置関係がよくわからないのが、残念である。

人の心の動きとストーリー展開を愉しむエンターテイメントとして絶好である。もう15巻まで読んでしまった。