遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

大人の見識

2008-04-16 16:32:54 | 


阿川弘之著「大人の見識」新潮新書237

東京の知人から借りた本だが、藤原正彦「国家の品格」を読んだときと同じよう
な読後感である。尤も天下国家を論じるのが主たる目的でなく、リベラルな考え
方とはどんなものか、といっているような気がする。英国、戦前の海軍などに題
材をとる。

「ふーん」と思ったのは京大教授中西輝政氏の言葉。
ギリシャの歴史家ポリビュオスによれば、物事が宙ぶらりんの状態で延々と続く
のが人の心を一番参らせる。その状態がどっちかへ決した時、人は大変な気持ち
よさを味わうのだが、もしそれが国の指導者に伝染すると、その国は滅亡の危機
に瀕する。カルタゴがローマの挑発に耐えかねて暴発し、滅びたのはそれだとーーー。

さらにつけ加えて、中西教授が言うには、「この言葉、近世の英国では軍人も政
治家も良く取り上げる決まり文句。英国のエリートは、物事がどちらにも決まら
ない気持ち悪さに延々と耐えねばならないという教育をされている。世界史に大
をなす国の必要条件ということです」。

リーダーは混沌の中で右、左を決める役目だ、と思っていたのとまったく違う考
え方である。自分の心地よさのために、決めてはいけないことを決める罪とでも
言おうか。大人だなあ。これとは逆の子供っぽさが、第二次世界大戦に日本を引
きずり込んだ、という阿川氏の主張である。

とまあ面白く、考え方の幅が広がる本であった。




駐車場の脇に紫色の草花が咲いていた。