風月庵だより

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贖罪の科学者

2009-04-01 12:41:06 | Weblog
4月1日(水)曇り【贖罪の科学者】

昨日、アメリカの平等山禅堂慈法寺の堂頭、ベナージュ(玄俊)大円師と会いました。大円師は先輩ですが、尼僧堂で2年間共に修行した法友です。大円師は僧堂安居時代から道心堅固な方でしたが、今もその姿勢は変わることなく、アメリカでの坐禅の布教に力を尽くしています。

その大円師からとても心動かされる話を伺いました。これは皆さんにも是非お伝えしたいと思います。慈法寺の御仏像について、たまたま私がお尋ねしましたところ、慈法寺のご本尊様についてのお話を伺うことができました。

この御仏像を作られた人は、もと大学に勤めていた科学者だそうです。第二次世界大戦のとき、あるプロジェクトの一員として研究をさせられたそうです。なんのための研究であるか、先生は知らなかったのだそうです。後に、その研究が原子爆弾をつくるための一端を担い、原子爆弾がどのような惨事を招いたかということを知りました。あまりのショックに先生は、大学の職の捨て、全てを捨てて、放浪者になったのだそうです。10年間、贖罪の放浪の後にある教会の一員となり、さらなる贖罪の日々を送られているのだそうです。そして、御仏像を造ったりもしているそうで、慈法寺に寄贈してくださったのだそうです。

このようなアメリカ人もいることを知りました。この話をしながら、大円師は万感胸に迫る思いで、思わず涙を流されました。このようなアメリカ人もいることを皆さんにお伝えしたいと思い書きました。

*たしか『原爆をつくった科学者たち』という本を買った記憶がありましたので、家に帰ってから本棚を探してみました。平成2年に岩波書店から出ていて、J・ウィルソンという人が編集した本でした。ざっと目を通してみましたが、ここに書かれている12人の科学者は、マンハッタン計画のなんたるかを知っていて、原爆をつくることを科学者として成果としてみなしているような人たちのようです。それに対して、編者は科学者の社会的責任を追及しています。ある意味、告発の書ともいえましょう。マンハッタン計画から身を引いた英国のJ・ロートブラット教授の言葉を紹介しています。なぜ他の科学者たちが(自分と同様に)計画から離脱しなかったかについて「社会的良心をもつ科学者は少数派で……単なる科学的好奇心から参加した人が多かった」と書いているそうです。

核爆弾は確実に人類を滅亡に導く凶器です。それをつくりあげることに意欲を燃やした科学者とは一体どのような人々なのでしょうか。慈法寺の御仏像をつくった先生は、なんのための研究であるか知らされていなかったにも拘わらず、その結果に人間として恐れおののき、贖罪の放浪の旅に出たのです。浮浪者のようになって。

北朝鮮のテポドンにしても核を積んでいないとは限りません。人類を破滅に導く核爆弾をつくりあげた優秀な頭脳の科学者たち。一方、大円師の導きによって坐禅修行もなさる贖罪の科学者の先生。科学的な進歩は滅亡と背中合わせであることを改めて思い、静かなる退歩の道を人類は選び歩みたいと思います。

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2 コメント

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tenjin和尚さんへ (風月)
2009-04-01 14:24:53
原爆をつくった科学者は好奇心旺盛なようです。600万ボルトの重陽子を外部にビームとしてとりだすことにわくわくしたり、核分裂に役立つ同位元素ウラン235の分離に苦心したりしているのです。

善悪は彼等には関係が無いのです。悲惨な結果も。このようなタイプの違う人間がこの世には同居している事実を見極めなくてはなりませんね。


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失礼いたします。 (tenjin95)
2009-04-01 13:55:45
> 管理人様

科学的好奇心が無ければ、科学は進展しませんし、科学者というのは、この好奇心を溢れるほどに持っている人ですから、おそらくそれが原爆開発に突き動かしたのでしょう。

その人達に、世間的な善悪の観念を求めても、多くの場合は無駄に終わるでしょうね。
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