mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

現代人の妄想

2016-03-25 09:01:02 | 日記
 
 このブログの《3/21 「火の山のマリア」―我が身の裡に淵源を探れ》で私はレミングの集団自殺のことを記し、《子どものころ知った話だ。確か映像も見たような気がするが、物の本で読んだ時の、私の思い描いたイメージかもしれない。》と付け加えた。ひょっとすると挿絵だったかと思い、「シートン動物記」を当たってみたが、そこにはレミングに関する記述がなかった。
 
 インターネットで探してみると「懐疑論者の祈り」というブログ・サイトにぶつかった。その中でディズニーの記録映画「白い荒野 White Wilderness」(1958年、日本公開は1960年)にレミングの集団自殺の画像があることがわかった。この映画は、1958年の「アカデミー長編ドキュメンタリー賞」を受けている。この映画を私が見たかどうかは、覚えていないが、観た可能性は大いにある。
 
 意外であったのは、「懐疑論者の祈り」が、レミングの集団自殺は「都市伝説だ」と断じていたことであった。北欧にすむレミングの集団自殺の「伝説」が1958年以前にすでにあったこともチェックしたうえで、ディズニー映画のカメラマン11人にインタヴューした記事や本にもあたっている。つまり「やらせ」であって、「動物虐待」と問題にされていたとも。
 
 映画を観たかどうかは覚えていないが、(私のイメージでは)シベリアの原野を駆け走るレミングがベーリング海に次々と飛び込んでいくすがた。本の挿絵だったかもしれないが、刷り込まれたイメージは、昨日何を食べたか(ちょっと考えてみないと)覚えていない私でも、55年以上も前のことなのに鮮明である。
 
 もっとも「3/21」ブログで用いた比喩は、人類史が滅亡に向かって暴走しはじめているのではないかという「妄想」であるから、その元ネタが「都市伝説」であっても大した違いはない。私のような庶民は、わりと簡単に百聞は一見に如かずというように、目で見たものに囚われて、自らの観念をかたちづくってしまっているものなんですね。
 
 もっとも、「懐疑論者の祈り」の子細な解析手法は、ずいぶんと知的合理性を貫いている。「参照資料」を明示し、それに関して末尾に掲げられたコメントはなかなか面白く、広がりを持つ。なかには、「カッパーフィールド 自由の女神消失 (Vanishing the Statue of Liberty by David Copperfield)」という記事もあって、なぜ「自由の女神が消えるのか」という「懐疑」を抱いて、「イリュージョン」の仕掛けを解き明かすということをしている。ずいぶんと大掛かりな手間暇をかけたマジックなのだと分かる。映像や動画を通して「知的形成」や「情報獲得・蓄積」をしている、私たち現代社会の人々は、自らが立つ足元の仕掛けにまでは気が回らない。「やらせ」にせよ「大がかりなマジック」にせよ、百聞は一見に如かずというドグマ自体をも、「懐疑」してかからねばならないというわけである。
 
 「妄想に注意せよ」というよりも、すべて世は夢まぼろしの如くなり、ということなのかもしれないと、思ってしまった。