名残の雪というには少々多く積もった雪ではある。きょう3日の朝までの寒波は、冬物の衣装を仕舞いかけた人々の手を止めさせたのではないか。
冬は最高のメーキャップ・アーチストである。雪というパウダーを山河に振りまき、その景色を一瞬に変えてみせる。この一年でいえば、春や夏や秋よりも、冬の方がずっとカメラの撮影回数が多かった。金沢大学のバス停からオフィスまで10分かかって歩いている坂道をこの日の朝は30分かけた。雪化粧に見とれていたのである。
見慣れた風景が変わると、感情や感覚が異常に騒ぐ。そして行動までも変える。足元の道路のマンホールのフタが古墳時代の銅鏡のように見え(写真・上)、小さな河川の堰(えん)堤が何か遺跡のように見えたら(同・中)、心が騒がないほうがどうかしている。そして、山の竹やぶが巨大ダムの決壊を特撮した映画のシーンのように見えたら…(同・下)。まさに幻想の世界である。
どう見えるか、想像はそれぞれにお任せする。冬という芸術家は何か意図を持って作品をつくっているわけではもちろんない。あれやこれやと鑑賞する人が楽しめばよいのである。その意味でこの冬は存分に幻想の世界を楽しませてもらった。
⇒3日(金)朝・金沢の天気 くもり
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