自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ブログの技術-22-

2006年04月23日 | ⇒ノウハウ検証

 これはよく言われることだが、新聞やテレビなどマスメディアによる情報はそのまま鵜呑みにするのではなく、分析するという読み方が正しい。つまり、マスメディアは現実を伝えているというより、現実の断片を構成しているに過ぎない。だから読み手が情報を読み解く力を持たなければならない。この読み解く力のことをメディアリテラシーと言ったりする。

   テーマ「メディアリテラシー」  

 メディアリテラシーはさまざまな媒体にいえることで、今回は新聞の折込チラシを取り上げてみたい。きょう(06年4月23日付)の新聞に実に地味なチラシが折り込まれていた。B4版サイズの白紙に黒の単色印刷である。「新茶つみたて 本場 静岡より直送!」とのタイトルで、おそらくパソコンを使った自家製のチラシだろう。

  このチラシを丹念に読むと、読者心理を実によく研究していることが分かる。静岡の新茶を直販する内容だ。一番早い4月28日から発送を予定している「新茶手づみ茶早摘」は100㌘1680円、それ以降遅くなり「新茶手づみ茶」(4月30日発送)だと1365円、ハサミで摘み取る「荒茶一号」(5月3日発送)は1050円、そして一番遅く機械で摘み取る「荒茶四号」(5月20日発送)となると525円にまで値段が下がる。摘み取りの時期と方法で6段階に分けた価格設定になっている。

  荒茶というのは「余分な加工をせず、茶葉の持つの本来の柔らかい味」で、本来は茶農家の飲み茶であり、見た目には粗悪かもしれないが本来のお茶、と説明している。そして、価格設定について「私達は価格について何年も議論しました。味や香りだけで価格を決め手よいのだろうか?」と前置きして、最終的に手で摘んで労力をかけたものを高く、機械で摘んだ遅く出荷するもの安くしたと記している。

  このチラシの主は静岡市のある生産農家。単独でまいたチラシである。「家族でがんばる静岡のお茶屋」「本広告は私達親子で印刷した物です」とアピールしている。では、このチラシから何が読み取れるのだろうか。ある意味で生産者の誠実さや信頼性かもしれない。親子の実名を記し、さらにホームページには家族の写真まで掲載していて、「品質は保証します。逃げ隠れしません」と主張しているかのようである。

  私は一歩踏み込んで、この生産者に新聞メディアに対する読み込みの鋭さを感じた。これは想像だが、このチラシをまさか全国3700万の全世帯に配布したということではなかろう。仮に1枚2.5円の折込料でも莫大な金がかかる。むしろ、全国統計で日本茶に対する家計支出額が多い都市や地域に絞ってチラシを折り込んだ。あるいは長年の通販の体験からニーズのありそうな都市を選んでいる可能性がある。つまり、マーケット調査をした上で私が住んでいる金沢市を選んだということだろう。

  さらに新聞の読者層までも選んでいる。このチラシは他紙に入っていない。つまり、「A紙の読者だったらこのチラシがピンくるだろう」と想定しているのかもしれない。そのキーワードが環境問題。「ご家庭用は環境問題も考え包装は簡易包装とさせて頂きます」と言った文面を抜け目なく入れ込んでいる。一枚のチラシでニーズをつかみ取るトレーニングを積んだ人がこの家族の中にいるのではないか。マーケット調査をしながら遠方のエリアに新聞折込のチラシを駆使して販路を開拓していくという手法は、少なくとも普通の家族労働の成せる技ではない。ともあれ面白いチラシを手にした。以上が私なりの分析である。

 ⇒23日(日)午後・金沢の天気  くもり


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★角間の古道を歩く | トップ | ★ホリエモンはどう動く »

コメントを投稿

⇒ノウハウ検証」カテゴリの最新記事