言葉は本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい時代環境になっている。それだけ、価値観の多様化や、とくに人権には厳しい視線が注がれる。語る場にもよるが、政治家が聴衆に面白く話せば話すほど誤解を生むことにもなりかねない。石川県の馳浩知事が今月17日に都内でスポーツ振興の会合で講演し、自身が自民党の東京オリンピック・パラリンピックの招致推進本部長だった当時のことを語った裏話が物議をかもしている。
メディア各社の報道によると、馳氏はこう語った。「当時、総理だった安倍晋三さんからですね。『国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ』と。ここから、今からしゃべること、メモを取らないようにしてくださいね。『馳、カネはいくらでも出す。官房機密費もあるから』」 「それでね、IOCの委員のアルバムを作ったんです。IOC委員が選手の時に、各競技団体の役員の時に、各大会での活躍の場面を撮った写真があり、105人のIOC委員全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。だけども、そのお土産の額を今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ。官房機密費使っているから。1冊20万円するんですよ」
馳氏はこの発言が明るみに出でてすぐに撤回したものの、「官房機密費」(内閣官房報償費)を話題にした時点でアウトだろう。政府が「国の事務、事業を円滑、効果的に遂行するため、機動的に使える経費」と位置づける官房機密費は支払先や使途の詳細はチェックされない仕組みになっている。2023年度予算は14億6000万円。その機密費の使い方が具体的に明かされたことで、官房機密費の有り様そものが今後、国会などで問われるだろう。
それにしも官房機密費を使って、開催都市決定の投票権を持つIOC委員全員にそれぞれのアルバムを作っていたとは、じつに違和感がある。と同時に新たな疑念もわく。東京オリ・パラを誘致する際に、電通の高橋治之元専務(※2022年8月に五輪に関連する受託収賄容疑で逮捕、その後保釈)はロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)によると、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦の資金を受け、高橋元専務らロビイストがIOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。
では、馳氏のアルバムと高橋元専務の820万㌦のロビー活動はどのような関わりだったのか。素朴に考えれば、高橋元専務が馳氏が作ったアルバムを土産に携え、IOC委員105人を回り、現金を配っていたということだろうか。そもそも、アルバム作りを馳氏に指示したのは安倍元総理だが、誰が提案したのだろうか。高橋元専務が絡んでいるのか。五輪誘致活動の疑惑は深まる。あくまでも憶測だ。(※写真は、馳浩公式サイトより)
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