自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続・ノーネクタイは楽じゃない

2005年06月04日 | ⇒トピック往来
  マスメディアはもうこの手のニュースは止めたらどうだろう。中央官庁で6月から始まった夏の軽装化の経済効果は1000億円に上るとの試算を生保系の経済研究所がまとめたとの記事がきょう4日付の各紙に掲載された。軽装化に伴う一連の出費は普通に夏物スーツを買うより3万円多いとし、国家公務員の男性25万人分なので75億円、さらに地方自治体や民間企業の12%が「今後、軽装を奨励する」という想定で、国内の男性ホワイトカラー計1500万人にこの数字を当てはめた経済効果が619億円、これに衣料関連の小売業などへの間接的な恩恵も含めた全体の波及効果は1008億円に上るというのだ。

  メディアに対し「止めたらどうだろう」と言ったのは、ノーネクタイの提唱は経済効果より本来もっと崇高な目的があったはずだ。夏のオフィス冷房温度を28度に上げて消費電力を抑制、二酸化炭素の排出量を減らし地球温暖化防止に役立てることだ。働く女性にも支持されるだろう。職場はネクタイに上着の男性優先で冷房がきつい。半袖やノースリーブの女性はカーディガンやひざ掛けで必死に冷房病から自衛している。ノーネクタイがあの悪しきオフィスの光景を変えることになるはずだ。

  机上で描いた経済効果の数字が独り歩きするほど怖いものはない。小中学校でのパソコン教育は当初、アメリカやシンガポールの学校を見て国際的な競争力に遅れるとの危機感から出発した。ところが、いつの間にか「IT革命で経済大国の夢よもう一度」と国の「E-ジャパン構想」の柱になってしまった。また、地上波テレビのデジタル化も、「1台30万円のデジタル対応テレビが国内の3000万世帯で普及したとして経済効果は9兆円」などと家電メーカーを勇気づける産業実験(6月1日付の「自在コラム」参照)になっているのである。国の教育や電波行政が、国民の金融資産1200兆円をいかに消費に回すか、そんなレベルの景気浮揚策の話に成り下がっているのだ。

  「獲らぬタヌキの皮算用」なのか「風が吹けば桶屋が儲かる」なのか、どちらでも構わないが、経済原則を当てはめると物事の本質論が歪められてしまう、と言いたかったのである。

⇒4日(土)午後・金沢の天気 晴れ 
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