自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★人とクマ、闘うとき

2006年11月13日 | ⇒トピック往来
 クマの出没がニュースとして取り上げられている。なにしろ、今年度、クマによる人身事故や農作物への害で捕獲されたツキノワグマが全国で2956頭(10月30日現在・朝日新聞まとめ)にもなり、死者3人・けが人111人となっている。大量出没したおととし(04年度)より捕獲数ですでに上回っている。

 クマ出没に関して、現在はドングリなどのエサ不足に加え、里山と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ、クマ自身がその領域の見分けがつかず、里山に迷い込んでくる…などの原因が考えられている。これを人災と見るか、害獣の侵入と理解するか意見は分かれる。

 かつて、この「自在コラム」(05年4月30日)にこのクマ問題でこんなふうに書いた。「クマが里に出没すると人の対応もさまざまです。去年の秋、富山県はクマに襲われ負傷した人が22人(去年10月時点)にもなりました。同じ北陸でも石川と福井は負傷者が一ケタに止まりました。クマに追いかけられて取っ組み合いとなったり、棒やカマで反撃したりとなかなか気丈な人が多いのが富山県です。私が新聞で見た限り、クマと「格闘」した最高齢は富山県上市町の77歳のおばあさんでした。」

 要は、富山県で負傷した人が多いのは、気丈な県民性でクマと出くわしても追い払おうとするせいではないか、と当時考えたのだ。この話を、先日(11月10日)にお会いした富山市ファミリーパーク園長の山本茂行さんにうかがった。山本さんの答えは、県民性というより地形に問題がある、との考えだった。

 五箇山山系の山と人里はとても近く、さらに砺波平野では散居村(さんきょそん)と呼ばれ、集住を避けて点在している。しかも、その家屋には「屋敷林(かいにょ)」と呼ぶ樹木が植わっている。すると山から下りてきたクマが人と出くわして、うっそうとした屋敷森に逃げ込む。するとそこは住家なので人との接触率も高い。けが人の数も多くなる。

 ここからは、私の推測だが、侵入者が自分の家屋や敷地など自分の生活圏(テリトリー)に入ってくれば、追い返そうと闘う。これは県民性というより、本能ではないか。クマと人とのかかわりをさらに考察してみたい。

⇒13日(月)朝・金沢の天気  はれ

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4 コメント

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熊大好き (熊大好き)
2006-11-18 02:01:04
こんにちは。小生の師匠は熊観察を18年間続けています。
http://www.yokotaworld.com/
人間こそ異常だ!! (高桑進)
2006-11-19 17:24:42
毎年、1万人近い交通事故死があり、自殺者が3万人近い我が国こそ、いのちを大切にしない異常な国ではないですか?
と、問いたい。

クマの専門家に聞いたことがありますが、日本に生息するツキノワグマの総数は不明。しかしながら、恐らく1万頭前後。
とすれ那、すでに半数近くを殺したことになります!!

これこそ、異常な事態です!!
おっしゃる通り (宇野)
2006-11-20 02:09:50
高桑先生、コメントありがとうございます。クマと人の共存は難しいですね。それも人が対自然に不器用になったからかもしれません。さらに、対人でも不器用になっていて、さまざな「いじめ」問題があるような気がします。
日本の第1次産業をどうするか (高桑進)
2006-11-20 15:00:20
現在、クマの異常出没で大騒ぎしているが、その原因としては
1)クマが増えた?
2)クマの餌が奥山になくなった。
3)クマと町の境がなくなった。
4)クマがヒトを恐れなくなった。

等いくつかの理由が考えられる。
いずれにせよ、クマと共存するなら、まず日本には何頭ぐらいのツキノワグマが生息しており、適正な頭数はいくらぐらいかのデータがないと、議論は感情論に終始する。
また、クマの餌が本当に少ないのは植林のせいか、どうかも不明である。餌が少ないのであれば、長期的には餌とある実のなる広葉樹を植えればいいが、そうするとクマは増えますよ。それでもいいですか、となる。
逆に、適正な数を超えて捕獲処分しているなら、絶滅危惧種がますます絶滅する方向に行くことになる。

冷静に考えればわかるように、クマによる死亡者や被害者

数は年間の交通事故死、自殺者数よりもはるかに少ないのである。
このことを良く頭に入れた上で、クマ退治を考えないと、絶滅危惧種を有害獣処理してしまうという、愚かな事をしている国として世界の嘲笑を買うことになるだろう。

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