自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★テレビ業界の歴戦の兵

2005年06月27日 | ⇒メディア時評
  自分自身を評するに、短距離ランナーだと思う。ダッシュは速いほうだが持続力に難があり、マラソンランナーのように数時間も走りぬいて沿道をわかせることはない。人生も同じで、一つのことを極め、業界を長く生き抜く達人がいる。私が尊敬する東京の森川光夫さんはそんな人だ。10年来、師匠と仰いできた。テレビ業界の音楽プロデューサーの草分け的な存在である。

  前の職場、北陸朝日放送で初めてクラシック番組を手がけた。朝日新聞・浜離宮ホール(東京)で演奏されるオーケストラ・アンサンブル金沢の「モーツアルト全集」を収録し、番組にした。番組はシリーズ25回、5年にわたった。このシリーズを始めるに当たって、テレビ朝日「題名のない音楽会」のチーフディレクターから「私の先生です」と紹介されたのが森川さんだった。70歳はゆうに過ぎた人だが、現在でも楽譜を読みながらカメラのカット割りを緻密に組み立てる名人である。酒も強く、眼光が鋭い。権威ぶった人が嫌いで、馬が合った。

  その森川さんに転職の挨拶状をしたためたところ、後日、素敵な絵はがきが届いた。何度も読み返し、日々の糧にしている。

   「お葉書ありがとうございました。一つの山の頂上を極める間もなく、更に奥なる山に意義を見出して突進して行かれるご様子。この貴兄らしい踏ん切りのよい転進に心からの拍手を送る次第です。これまでの感性的な仕事の蓄積と、新しいアカデミックで社会性の強い仕事の融合はきっと魅力ある納得のいく世界が開けてくることでしょう。ご自愛の上、個性溢れる人生を営んで下さい。又いつか、折りがあったらお会いしましょう。」

   森川さんの鋭さは、「新しいアカデミックで社会性の強い仕事の融合はきっと魅力ある納得のいく世界が開けてくることでしょう」の一文で判る。「金沢大学の地域連携コーディネーター」としか自己紹介をしていないのに、この仕事の意味と意義をここまで洞察する人なのである。テレビ業界を生き抜いてきた「歴戦の兵(つわもの)」とはこんな人物像である。

⇒27日(月)午前・金沢の天気  曇り
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