自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「中国に感謝」テドロス会見から読めること

2020年04月29日 | ⇒ニュース走査

   前回に続き、気になった記者会見をもう一つ取り上げてみる。WHOのテドロス事務局長が現地時間27日にスイス・ジュネーブの本部でインターネットを通じ行った会見だ。WHOの公式ホームページをチェックすると会見のテドロス氏の ブリーフィングの内容と記者からの質疑の様子が動画で掲載されている=写真=。 

         ブリーフィングの前段は一般論でウイルスを制御するためにはワクチンが必要と訴えている。ワクチン接種率が下がると、麻疹(はしか)やポリオなどの生命にかかわる病気で多くの集団発生が起こると警鐘を鳴らしている。後半から新型コロナウイルス感染に対するWHOの対応を述べている。その中で気になる文言が、「I would like to thank the People’s Republic of China, Portugal and Viet Nam for their recent contributions to WHO’s Strategic Preparedness and Response Plan.」だ。WHOへの活動に貢献する中国、ポルトガル、ベトナムに感謝する、としている。

   確かに、中国は今月23日にWHОに対し感染対策として3千万㌦を寄付すると発表した。これまで表明していた2千万㌦に加えて合計5千万㌦、日本円で53億円の寄付となる(今月24日付・NHKニュースWeb版)。テドロス氏が中国に感謝するのは理解できるが、ポルトガルとベトナムはどのような貢献なのか読めない。「中国寄り」との批判をかわすための付け足しなのかと勘繰ってしまう。

   ブリーフィングの締め括りは、「We can only defeat this virus through unity at the national level and solidarity at the global level.(私たちは国家レベルでの団結と世界レベルでの連帯を通じてのみこのウイルスを倒すことができます。)と強調している。裏返せば、世界が団結に至っていないので、感染者は310万人、死者は21万人(28日現在、ジョンズ・ホプキンス大学CSSE集計)のパンデミックになっているのだ、とも読める。

   穿(うが)ち過ぎとの指摘を受けるかもしれないが、アメリカのトランプ大統領はWHOの一連の対応が中国寄りと批判し、一時的に資金(4億㌦)の拠出を停止する考えを示している。そこで、テドロス氏は国名を名指しこそしなかったが、団結を乱したアメリカで感染者100万人、死者が6万人も出ているのは自業自得だ、と皮肉っているようにも読める。

   このブログでも何度か述べたが、テドロス氏はWHOの緊急事態宣言を「時期尚早」と見送った(1月23日)。これが感染拡大の原因の一つと問題視する見方が世界で広がった。最近ときおり閲覧する、署名サイト「Change.org」でテドロス氏解任キャンペーンが展開されている。きょうチェックすると100万を上回る署名が集まっている。

⇒29日(祝)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

コメント (2)
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